水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第48回「ベタ・インベリスの改良品種」

鮮やかなブルーの色彩を見せるブルー・インベリスのオス個体。向こう側にいるのは、グリーン・インベリスである。このようにして見ると、色彩の違いが良くわかるだろう。

毎年恒例となった秋のタイ訪問である。
バンコクに着くと翌日はすぐにチャトチャックと呼ばれるサンデーマーケットに顔を出すことにしている。
このサンデーマーケットには数多くのベタ専門店があるが、結構入れ替わりは激しいようで、来るたびに移転したり新しい店が出来ていたりする。
今回は、ハイブリットのベタの専門店が出来ていた。
ここのところマハチャイエンシスをベースとしたハイブリッドのバラエティが見られるようになっていたが、ついに専門店が出来たという事は、それだけタイのベタ・シーンの中でハイブリッドが受け入れられ、需要があるという事だろう。
今までひとつの店でこれだけのハイブリッドを見る事は出来なかったので、その様子はベタ好きにとって壮観であった。
と同時に、その価格にはため息をつかざる負えなかった。

こちらは体側全体にグリーンがべったりと乗ったグリーン・インベリスである。こちらは通常のインベリスからも想像がつく色彩なので、ブルー・インベリスほどのインパクトはないだろう。

確かに素晴らしい個体ばかりなのだが、その価格はかなりハイレベルなプラカットと同等かそれ以上なのである。
それもオスのみでの値段である。 メスはいるのか尋ねると、オスと同じ価格だそうだ。
タイの物価は日本の1/3~1/5ぐらいである。日本円に換算したら、ペアで2~3万円という価格帯である。
趣味の魚にそれだけのお金を使えるようになったとは、タイもかなり裕福になって来たものである。

さて、この店はハイブリッドだけでなく、ワイルドやその改良品種も置いている。
ワイルドも、かなりセレクトしたスペシャル個体ばかりで、素晴らしい個体ばかりである。
もっとも自分が気になったのは、インベリスの改良品種で、体側や各ヒレがブルーに輝くブルー・インベリスと、体側にべったりとグリーンが乗るグリーン・インベリスであった。
聞いてみると、これらはハイブリッドではなく、ナコンシータマラート産のインベリスを元に作出したそうである。
ちょうど、ナコンシータマラートで採集されたと言うインベリスを撮影したばかりであったが、原種とは似ても似つかない見事な色彩だ。
確かにインベリスのワイルドの中には、稀に体色のブルーが強い個体が見つかるそうで、自分の知り合いもクラビ産のインベリスの中からブルーの個体を見つけて、現在ブリーディング中という情報を得ている。
グリーン・インベリスに関しては、ランカウィ島産のインベリスに近い印象を受けた。

ナコンシータマラート産の採集個体のインベリス。インベリスとしては標準的な色彩の個体群である。ブルー・インベリスはこの産地のインベリスから作出されたそうである。

ランカウィ島産のインベリスのギラギラした個体を選別していけば、同じようなインベリスは作出可能だろう。
ブルー・インベリスの見事さには唸らせられたのだが、衝動買いは何とか控えた。
翌週からフィールドに出かけるので、留守の間に死んでしまったらと考えたのだ。
戻ってきてまだ売られているようなら、撮影のモデルに購入しようと考えていた。
10日後、バンコクに戻ってきたら、幸いな事にブルー・インベリスはまだ売れないで残っていた。
やはりこの値段の魚はそうそう売れないようだ。当然のようにお買い上げである。 すでに出来上がっている魚なので、翌日には容易に撮影ができた。
ファインダー越しに覗いたブルーの姿は絶品であった。
色彩の比較のために、フィンスプレッディングの相手にはグリーン・インベリスを使った。
その写真が今回紹介しているものである。

通常のインベリスを見慣れた目には、このブルーの色彩はかなりインパクトが強い。尾ビレや尻ビレの色彩はそのままなので、ブルーとの対比が非常に美しい。ぜひとも量産され、価格的に手頃になって欲しいものである。

よく考えると、スマラグディナやマハチャイでも、ブルーやカッパー、グリーンなどの改良品種は作出されているが、インベリスでは改良品種はほとんど目にする事はなかった。
この違いは何故なのであろうか?それだけ、色彩や形質が安定しているのだろうか?単に飼育の歴史が浅いだけ?
でも、同じ産地のインベリスを数多く見ていると、体側の色彩や尾ビレや尻ビレに入る赤い色彩などはかなり個体差がある。
根気よく選別していけば、更なる新しいタイプにインベリスも作出可能だろう。

そう言えば、2016年に同じチャトチャックで、面白いインベリスを見つけて撮影していた。 プラカットと同じようなサイズでごっつくて、体色やヒレの色彩は正にインベリスだが、尾ビレの形態がハーフムーンなのである。 購入したショップで尋ねたのだが、素性は不明で、オスのみしかいなかった。 間違いなく純粋なインベリスではなく、プラカットの血筋が入っているのは容易に想像できた。 そうでなければ、このハーフムーンの尾ビレは有り得ない。 最近、タイのプラカットのほとんどは、尾びれはハーフムーンになっている。 しかし、このインベリスは尾ビレの形態とサイズ以外は、ほぼインベリスと同じ色彩であった。 尾ビレの赤い三日月模様、尻ビレの先端の赤い模様、鰓蓋の色彩などの特徴は、全くインベリスと同様である。 購入した店にはその後何度となく訪れたが、それ以降入荷はなく、情報もない謎のインベリスである。 自分は、この魚をハーフムーン・インベリスと呼んでいるが、素性がはっきりしてペアで出回れば市場はあると思うのだが、いかがであろうか?

美しい色彩とフォルムを見せるハーフムーン・インベリスのオス個体。尾ビレの形態に注目して頂きたい。写真だとサイズが伝えにくいが、大きめのプラカットぐらいのサイズで、ボリューム的には通常のインベリスの倍以上である。

このコラムでは、スマラグディナやスプレンデンス、マハチャイエンシスなどのワイルド・ベタはすでに紹介してきたが、インベリスは今回が初めてである。 タイで入手できる産地別のインベリスだけでも、ここ数年でかなりのタイプになり、ストック写真も増えつつあるので、自分で納得できるようになったら紹介しよう。 しばしお待ち頂きたい。

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