山崎浩二のSmall Beauty World

第6回「ベタの原種」

【闘争】
雄同士で闘争するタラット産のベタ・スプレンデンス。
闘争時にはきらめく体色を見せる

数多くの色彩やヒレの形が楽しまれているベタであるが、派手で大きな綺麗なヒレを持っているのはすべて人により作り出された改良品種である。あまり紹介される機会の少ない原種ベタ(Betta splendens)は、ヒレも小振りで色彩も改良品種ほど派手ではない。 この原種ベタは、元々はタイの平野部に広く分布していたようである。しかし、人々の生活による生息場所の破壊により、現在では一部の地域でしか見る事ができなくなってしまっている。

また、改良品種が自然に放たれた事により交雑してしまい、本当の意味での原種を見つける事は非常に難しくなっている。 
改良品種の元になっているベタ・スプレンデンスの原種がバンコクを中心とするタイの平野部に生息するのに対し、タイ東北部には近縁種のベタ・スマラグディナ、タイ南部にはベタ・インベリスが生息している。またバンコク近郊の汽水域にはベタ・マハチャイと呼ばれる未記載種も生息している。これらの種類は近縁な事から飼育下ではベタ・スプレンデンスとの交雑も可能である。

【雌】
雄に比べると各ヒレが短く、色彩も地味である。
繁殖時には体側に不規則な横縞が現れる
【求愛】
雌(写真奥)に求愛するクローンヤイ産の
若いベタ・スプレンデンスの雄。
闘争時同様に赤や青の色彩が濃くなり、
魅力的な色彩に変身する

一昨年の暮れ、このベタ・スプレンデンスの原種を撮影したいとの依頼が某国営放送の知人から連絡が入って来た。海水魚がテレビで取り上げられる機会は多いが、淡水の熱帯魚が放送される機会はほとんどない。これは一般の人に熱帯魚の魅力を知ってもらうチャンスと思い、喜んで仕事を引き受けた。昨年3月中旬から4月中旬まで、この撮影のためにタイ東部のベタ・スプレンデンスの原種の生息場所に滞在し、現地のフィールドの案内の他、飼育や繁殖のアドバイスをしてきた。この番組は昨年の9月に、ダーウィンが来た!生きもの新伝説「空気の魔術師 闘魚ベタ」で放送されたので、見た記憶のある読者の方も多い事だろう。
一般の方向きに編集してあるので、ちょっとマニアの方には物足りなかったかもしれないが、ベタという魚を知ってもらうには良い機会であった。

【雄】
タイ東部タラット産のベタ・スプレンデンスの雄。
数は非常に少ないが、たまにこのように
尾びれの形が異なる魚も見られる
【生息場所】
タイ東部クローンヤイのベタ・スプレン
デンスの 生息場所。
岸際の浅い場所の草の間に生息している

ベタ・スプレンデンスの原種の生息場所は、草の茂った浅い湿地や水路である。あまり深い場所には生息しておらず、水際の草の陰など浅い場所を好む。
水が引き水位の下がった乾期に同じ場所に泡巣を作り繁殖する。繁殖期のオスは体色が濃くなり、ヒレの色彩も美しくなり、見違えるように変身する。色彩的にはややベタ・インベリスにも似るが、頬に赤いラインが2本入るのがベタ・スプレンデンスの特徴である。

最近になり、多少このベタ・スプレンデンスの原種が輸入されるようになっているので、興味のある方は飼育にチャレンジしていただきたい。
飼育は容易で、雌雄揃っていれば興味深い繁殖まで楽しめる。餌はあまり人工飼料を好まないので、生き餌や冷凍赤虫が適している。

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