山崎浩二のSmall Beauty World

第43回「ゴールデン・シャレリー」

ゴールデン・シャレリーのオス個体。オス同士は出会うと各ヒレを広げて自分を誇示する。これが激しさを増すと、クローキンググーラミィの名の通り、ココッと鳴く事があるのだが、本種ではまだ確認していない。

昨年の10月末頃、タイ東北部のブンカンにあるブンコンロン湖に撮影と採集のために出掛けて来た。目的はこの辺りにだけ生息するベタ・スマラグディナ・ギターの生息状況を確認するためであった。まだ若い個体ながらも目的のギターはすぐに採集が出来てホッとしていた。しかし、この採集の際にギターと同じぐらいに気になる魚も採集できていたのである。それはスリーストライプド・クローキンググーラミィとも呼ばれるトリコプシス・シャレリーである。ここブンコンロン湖周辺に生息するシャレリーは、網で掬った瞬間に明らかに今まで採集してきたシャレリーとは異なる姿をしていたのだ。まずは体色、普通のシャレリーはメタリックグリーンに輝いているのだが、ここのは黄色みが強く、ゴールデンに輝いていた。次に体型、普通のシャレリーは尾びれの先端が伸長しピンテールになるのだが、ここのはやや突出する程度で、顕著なピンテールにはならない。100個体以上を採集しながら観察したが、ほぼ同じ特徴であった。黄色みの強いのはオスのようで、小型の個体やメスと思われる個体は色彩が薄い印象であった。この際は撮影用に数個体を1匹パッキングしてバンコクまで持ち帰ったのだが、残念ながら落としてしまった。

ブンコンロン湖の近くのSEKAになるゴールデン・シャレリーの生息場所。同じ場所にはもっと大型になるクローキング・グータミィの姿も多い。どのように棲み分けているのであろうか?
現地で採集した直後のゴールデン・シャレリー。この美しい色彩もほんの数分で消えてしまう。本属に魚はどれも採集した瞬間に煌めくような美しい体色を見せてくれる。しかし、この体色を水槽内で再現するのは容易ではない。

今年も例によってビザの取得のためにラオスに出掛けた帰りの4月末にブンコンロン湖を目指した。相棒のトンが輸出用のギターやその他の魚を採集するためである。自分は以前からフィールドは同じ場所でも異なる季節にも行ってみなければいけないと思っているので、当然のように一緒に行動である。季節が異なる際のギターも確認したいし、シャレリーもリベンジしたかった。

各ヒレを広げて精一杯自分を大きく見せようと誇示行動をしているゴールデン・シャレリー。興奮した最は眼も赤と青に染まり非常に美しい。ぜひこの姿を見るために水槽の環境を整えて欲しい。

まずは、昨年ギターやシャレリーが豊富に確認できたSEKAという場所に行ってみた。最乾期と言うこともあり、かなり水位は下がっており、生息場所の様子はかなり様子が変わっている。採集のために水に足を入れるとかなりぬるい。やや深みはやや水温が低い感触が伝わって来る。植物の生い茂る茂みに網を入れると、まずは久々に目にするシャレリーが入って来た。やはり昨年と同じように黄色みが強く、明らかに他の場所のシャレリーと異なっている。今回は採集してすぐに撮影。シャレリーもそうだが、リコリス・グーラミィなどこの仲間は採った瞬間に最高の色彩を見せるのだが、数分もすると色彩が褪せてしまう。網で掬い上げて数分が勝負なのだ。この間に網の上で撮影するか、ビニール袋などの容器に入れて撮影すると、自然下での本来の色彩を記録できる。今回はビニール袋に入れて撮影を行った。

ゴールデン・シャレリーと同じ場所で網に入って来たインドストムス・スピノーサス。パラドックス・フィッシュと呼ばれる魚で、メコン水系に分布しているが、近年生息数は非常に減少している。今回は二人で丸一日採集して、1匹しか採れなかった。
やはり同じ場所に生息するベタ・スマラグディナ・ギターのオス個体。オスの尾びれに入る格子状の模様が特徴だが、個体により変異があるのが今回確認できた。

やはり自分の勘違いではなく、ここブンコンロン湖のシャレリーは黄色みが強く、他のタイ東北部やラオスのシャレリーとは異なっている。両種を区別するために、ブンコンロン湖産のシャレリーは、ゴールデン・シャレリーと呼ぶことにしよう。それにしても、ここブンコンロン湖は不思議な場所である。ベタ・スマラグディナだけでなく、トリコプシス・シャレリーまでもが、独自の色彩となっている。たぶん過去に他地域と隔絶されるような地殻変動などがあったのだろうか?ちなみにここSEKAだけでなく、ブンコンロン湖本湖の方のシャレリーも同じゴールデン・シャレリーである事も確認している。更に今回はもうひとつの成果が!前回は全く採集もできなかったパラドックスフィッシュが1匹だけ自分の網に入って来たのである。この地域のパラドックスフィッシュはタイ南部のとは種類が異なり、Indostomus spinosus とされている。地域的にはこの場所にいてもおかしくはないのだが、やはり初で網に入ってくると嬉しいものである。

通常のトリコプシス・シャレリー。メタリックグリーンやブルーで飾られ大変美しい。やはり生息場所により体型や体色に変異のある事が確認されているが、ここまで色彩と体型が異なるのは珍しい。
ゴールデン・シャレリーは通常のシャレリーと色彩やヒレの形状が異なる他、サイズもやや小型である。ベタ・スマラグディナ・ギターもそうだが、何故この場所の魚が他地域と大きく異なっているのか謎である。今後の研究を待ちたい。

ギターは岸寄りの植物の陰に多く、ゴールデン・シャレリーは浮いて塊になっている植物の下の辺りに多い。今回は水位も下がっていたためにギターも前回以上に採集ができたのだが、サイズが大きい割に、色彩が薄い個体が多かった。前回は小ぶりな個体が多かったが、採集した瞬間に黒っぽいメタリックグリーンに輝く個体が多かったのだが、今回はその煌めきが見れないのである。この事から、この場所では、10~11月が繁殖の最盛期で、4~5月は繁殖期ではなさそうである。こういう事は複数回来てみて初めて分かる事である。

前回は惜しくも殺してしまったので、今回は掬った瞬間に自分で1匹ずつゴールデン・シャレリーをパッキングした。撮影モデルの6匹は無事にバンコクまで運ぶ事ができ、水槽撮影もする事ができた。あとはこの後どのような色彩変化や体型の変化があるのか、飼育しながら確認したい。シッパーでもある自分の相棒のトンは、この貴重な魚を日本へ輸出したようなので、実際にこの魚を日本で飼育できるチャンスもあるだろう。通常のシャレリーとは異なる魅力を持ったゴールデン・シャレリーが趣味の世界に定着する事を祈りたい。

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