2017年の1月、例によってバンコクのサンデーマーケットに魚を見に行った。ここは魚関係のショップが多数あり、魚好きには眺めているだけでも楽しい楽園のような場所なのである。ただし、バラック小屋のような並びの店が続くばかりなので、暑さにはご注意を!夢中になっていると熱中症になる可能性も高い。自分の場合、一通り見て回り汗ダラダラになったら、魚のエリアの横にあるJJモールという冷房の効いた商業ビルに入る。この中の飲み物屋でスイカのスムージーを飲んで身体を冷やすのが定番である。そして身体の芯まで冷えたら、また暑さとの戦いに出陣するのである。
この場所で出店しているベタ屋のほとんどとは顔馴染みなので、歩いていると声を掛けて貰う事も多い。これが自分のような仕事の者には重要なニュースソースになる。今回はある店で呼び止められ、これを見ろと言われて見た先には見たことがありそうでない魚が!なんとコイベタのベールテールタイプ(トラディショナルタイプ)である。
英名ではコイベタ・トラディショナルとでも呼べば良いのだろうが、それだと意味的に誤解が生じそうなので、コイベタ・ベールテールと呼んだ方が良いだろう。
それにしてもこの魚のデビューはある意味順番を間違えた感じがしないでもない。通常のコイベタがデビューし、それに続き作出されたのはコイベタのハーフムーンであった。その後コイベタのジャイアントへと続いていた。素人考えには、コイベタのハーフムーンよりもベールテールの方が先にデビューしそうなものであるが、これだけ時間がかかったのには訳があるのだろう。
遺伝的にベールテールタイプにコイベタの色彩を移行するのが難しかったのかもしれないし、商売的な考えがあり、先にハーフムーンの方に着手していたのかもしれない。この部分については今回は調べる時間がなかったので、次にタイに行く機会に調査する事にしたい。
このコイベタ・ベールテールには重大な問題がひとつ存在している。それは価格である。魅力的な魚を見せられて、すぐに自分はその価格を訪ねたのだが、返って来た答えは自分の想像よりも高いものであった。デビュー時のコイベタ・ハーフムーンよりも高いのである。一般の人のベタの価格の概念としては、ハーフムーン>ベールテールであろう。ところが、後からデビューしたベールテールがハーフムーンよりも高いとなると、ちょっと素直に受け止められないのではないだろうか?
値段が高いのにはそれなりの訳があるのは間違いない。これだけ作出が遅れたのは何かしら遺伝的な難しさがあり、より手間と時間がかったのではないかと推測できる。それが価格に反映されているのはボッタクリではなく正当なものである。そうでないとベタのブリーダー達は面白くないだろうし、モチベーションも上がらないだろう。ただし、この価格も初物のご祝儀価格のような意味もあるのであろう。この問題も人気が高くなり、魚が量産されるようになれば、次第に解消されるに違いない。実際、コイベタ・ハーフムーンは半年ほどで、かなり手頃な値段に落ち着いたという実績がある。
もうひとつの問題は、まだ市場への供給数が少ないことであろうか?数多くのベタ専門店があるサンデーマーケットの中でも、自分の知る限りではこの魚を扱っているのはまだ1店舗だけである。そして殖やされて価格暴落を恐れているのか、まだ販売されているのは雄のみで、雌はリリースされていない。
写真を見ていただけば分かるだろうが、コイベタの場合、ベールテールタイプの方がハーフムーンよりも更に和風な感じがするのは、尾びれが着物の裾を連想させるためであろうか?一目見た瞬間にベタ好きにはウケるだろうと感じられた。色彩的にもコイベタのスタンダードな三色系から、赤系、黄色系まで揃っている。気温が上がり、ベタの需要が増える春過ぎからの日本の市場での動向が気になる。