水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第111回 ゴールデンアーム・スリーパー

体色を黒化させオス同士闘争するゴールデンアーム・スリーパー。成魚でも全長7cm程と小型で飼育も容易な魅力的な種類である。

ワイルドベタが好きな人はタイ東北部のブンカン県に位置するブンコンロン湖と言えばベタ・スマラグディナのギターを思い浮かべる事だろう。
そう言う自分も初めてブンコンロン湖を訪れたのはギタ-の採集と調査の為であった。

初めて訪れたブンコンロン湖は思っていたよりも大きく、場所によっては英語で〇〇ビーチと表記されており、本当に海水浴場のようであった。

湖岸を車で走っていると、あちこちに漁師の小舟が見えて、湖岸付近には何か蓄養しているかのような生簀が見えた。
ちょうど漁を終えて戻ってきた来た漁師がいたのでトンが話しかけてみた。
人見知りな自分と違い、トンは誰にも物怖じしないで話しかけ、すぐに友人になってしまう。
この辺りが日本人と大違いで、知らない同士でも1時間でも世間話してしまうのだ。
これは才能とも言え、この性格のおかげでどこに行ってもすぐに地元の人と知り合いになり情報をゲットしてくれる。頼もしい相棒と言える。

普段は水底の物陰などにいる事が多いが、同種の姿を確認するとそろっと近付き、ヒレを広げ体色を黒化させ闘争する。武骨な表情をしているが、激しく噛み合ったりの闘争は行わないようである。
普段は水底の物陰などにいる事が多いが、同種の姿を確認するとそろっと近付き、ヒレを広げ体色を黒化させ闘争する。武骨な表情をしているが、激しく噛み合ったりの闘争は行わないようである。

漁を終え戻って来た漁師に話を聞くと、この湖の名物でもある小エビを獲って来たそうである。この小エビは日本のスジエビに近縁な種類と思われる。
岸際の浅瀬にある網で作った生簀はその小エビを蓄養する場所なのだそうだ。
それを見せて貰っていると、あちこちにフグの死んだ個体が有るのに気が付いた。
この淡水フグは、古くはブンコンロン・レオパードパッファー(Pao palustris)と呼ばれ日本にも輸入されていた事があるが、現在はタイからの輸出禁止リストに載っているために入手不可能である。

水中に定位しているゴールデンアーム・スリーパー。体色は明るく黄色味帯びているが、3cm程の幼魚ではもっと鮮やかなイエローの体色である。

このフグが何故小エビの生簀の周辺に死んでいるかは、漁師に話を聞いたところ頷ける状況であった。
小エビが大好物であるフグは生簀の小エビを盗んで食べる為に寄って来るのだと言う。
そのため漁師は見つけ次第殺しているそうだ。
当時は輸出禁止ではなかった為、トンは日本に出荷する為にこのフグが欲しいと漁師に話したところ、いくらでも持って行ってくれと言う話になった。
そりゃあ商売物を盗み食う害魚を買い取って貰えるなら漁師にとっては御の字であろう。

ゴールデンアーム・スリーパーの生息するタイ東北部のブンコンロン湖。数多くの魅力的な淡水魚の生息する湖である。昔は鄙びた雰囲気の知る人ぞ知る観光地であったが、最近は完全にリゾート化されており白人の観光客も多く見かける。

翌日漁師のところを訪れると、フグを集めておいてくれていて、酸素パッキングしてバンコクへ持ち帰ったのが懐かしい。
2025年秋、暫くぶりにラオスからの帰りにブンコンロン湖のこの漁師のところを訪れた。
ブンコンロン湖は当時とは全く異なりリゾート化されており、ほぼ昔の面影は無くなっていたが、名物の小エビの漁は健在であった。

ちょうど漁に出ていた漁師の1人が戻って来て、ボートの上で網を広げて獲物の選別を行っていた。
この漁師の網の中は正に宝箱で、ブンコンロン湖に生息している各種の魚が小エビと一緒にひしめいている。

漁師の網に入った小エビとその他の魚。膨らんで丸くなったパオ・パルストリスが可愛い。その他グラスフィッシュやプンティウスなどの姿も確認出来る。こうした中からゴールデンアーム・スリーパーを探す。

今回、パオ・パルストリスと一緒に網の中で目立っていたのはマーブル模様のハゼであった。
以前はあまり見た記憶がない種類だったので、手持ちのビニール袋に入れて確認したところ非常に魅力的な種類である。
取り敢えず網の中にいる状態良さそうな個体だけ集め、パッキングして宿に持ち帰ってみた。
漁師には明日この魚が獲れたら買い取るので、集めておいてくれるように頼んだのだが、その願いは叶わなかった。
まあ他所者の頼みなんかまともに聞いてくれる人は少ないだろうから、いつもの事とがっかりもしないのだが。
パッキングしたこのハゼを見ていたら、以前セカと言う場所でギターやゴールデンシャレリーを採っていた際に一緒に網に入って来た黄色いハゼと同種である事に気が付いた。

漁師の網の中から小エビを掻き分け拾い上げたゴールデンアーム・スリーパー。あまり擦れていなかったためか、拾い上げた個体は全て元気にバンコクに持ち帰る事が出来た。

以前採集したのはまだ幼魚であり、体色も異なっていたため同種であるとは認識出来なかったが、まず間違いないだろう。
このハゼはタイの淡水魚に詳しい知人に聞いたところ、Neodontobutis aurarmus と言う学名で日本のドンコに近縁でメコン水系固有の種類である事がすぐに分かった。
メコン・スリーパーやゴールデンアーム・スリーパーの英名があるようだが、ここではゴールデンアーム・スリーパーと呼びたい。
この時網の中から拾い上げた個体はかなり擦れている為に落ちてしまうだろうと思っていたが、驚異的な生命力で全て死なずに元気になった。
見た目によらず強健な種類のようで、実際飼育も容易であった。

ブンコンロン湖名物の小エビの天ぷら風かき揚げ。さっくりと美味しくいくらでも食べられてしまう感じである。ブンコンロン湖を訪れる機会があればぜひ食べて頂きたい。

日本に持帰った2匹を自宅の飼育水槽で観察していると、普段は黄色味の目立つ体色をしているのだが、2匹が出会うと体色を黒化させ、マーブル模様の非常に魅力的な色彩に変化する。
かと言って激しく闘争する事も無い為、複数を同居させておいてもヒレなどが痛む事もないようである。
餌は生餌を好むが、冷凍赤虫にも容易に餌付くので飼育は楽である。
飼育していると人の姿を見て水槽の角に寄って来る素振りも見せるので、非常に可愛くペット向きである。
このゴールデンアーム・スリーパーは近い将来トンがブンコンロン湖に採集に行き、日本に出荷してくれる事を期待したい。

個人的にはまたゆっくりとブンコンロン湖に採集と撮影に行き、名物の小エビの天ぷら風のかき揚げを食べたいものである。

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