山崎浩二のSmall Beauty World

第54回「コイベタ・フルムーン」

柄の入り具合のバランスやヒレの大きさなどもほぼ完璧なコイベタ・フルムーンのオス個体。ダブルテールならではの背ビレのボリュームも申し分なく、ふたつに分かれた尾ビレのバランスも良い。

今年に入ってから、タイのベタ・シーンはニモベタ一色に染まっていると言ってもよいだろう。 3月にタイに来た際は、珍しさもあって非常に目を引いたが、5月頃にはやや食傷気味になって来た。 チャトチャックのベタ専門店の店先は、どこもニモやキャンディばかり並んでいるという状態になっている。 商売である以上、旬で売れる魚を並べるのは間違いではないだろう。 お客が望むものを仕入れて売るのは、商売の王道である。
ただし、自分のような純粋なお客ではない捻くれた客は、ニモ、ニモと騒がれて来ると、違うベタが見たくなってしまう。 昔から流行りモノには乗らない捻くれた性格なのは、困ったものである。 ベタの新品種を撮影するというのは、自分の仕事なので、ニモも良い個体を見つけると義務感で撮影してきた。

体側に入る鱗の青白い光沢が特徴的なオス個体。背ビレの大きさも柄の入り方も美しい。尾ビレの分かれ方のバランスも良いが、強いて言えば尾ビレにもう少し柄が欲しいところである。

最近では、ニモベタも2ヶ月前の半額以下に値段も落ち着いて来た。比較的気軽にモデルを入手出来るようになったのは嬉しい限りである。 日本で雑誌で紹介された影響もあり、ニモベタの人気は高まっているようだ。
3月頃の価格では、一般への普及は不可能であったが、6月に入ってからの値段は、日本でも無理な価格にならない程度に落ち着いて来た。 さらに数ヶ月すれば、まだ値段は下がると思うので、そうなった際に日本でもコイベタのようなブームが来るであろう。 さて、ニモベタに関しての前振りが長くなってしまったが、今回のコラムのテーマはコイベタ・フルムーンである。

ある時、知り合いのベタ・ファームに出かけた際に、これはまだ撮影していないでしょう!と渡されたのが、コイベタのフルムーンであった。 ここのファームとは良い関係を築いており、いつもモデルの魚を調達するのに使わせて頂いている。 それだけに、自分が撮影済みの個体も把握しているので、未撮影の個体や品種をいつも勧めてくれるのである。 ニモベタに飽きていた身には、今回のコイベタ・フルムーンは非常に新鮮に感じられた。 普通にいそうで、まだいなかったのがこの魚である。

透明な各ヒレに入る赤い柄がガラス細工のような涼しげな姿のオス個体。コイベタ同様、同じ色模様の個体はいないので、自分好みの一匹を選び出す楽しみがある。
コイベタとしては、体側やヒレに入る柄が多少物足りない感じがする個体であるが、透明感のあるヒレは涼しげで夏向きの魚と言えるだろう。コイベタの多くは成長に連れて、色彩は大なり小なり変化するので、良い方向に変化する事を期待したい。

コイベタのハーフムーンが出回る様になって随分と経つが、誰もこれをダブルテールにしようと考えていなかったようだ。 それか、もしかすると途中で挫折してしまったか、今の市場では競争力がないと思ってやめてしまったのかもしれない。
コイベタのプラカットのダブルテールは、コイベタの人気全盛の際にすでに世に出ていたのを確認しているし、このコラムでも紹介している。 ベタをよく知らない人のために解説しておくと、ハーフムーンのダブルテールの事を、全体のフォルムがハーフムーン(半月)に対し満月に見える事から、フルムーンと呼ぶのである。

ブラッシングのボディに透明なヒレ、そこに散りばめられた柄は赤ではなくオレンジ色の珍しい個体。欲を言えば、尾ビレにももう少し柄が欲しいところだが、成長に連れて、色彩は変化する可能性もあるので、そこに期待したい。
まだやや若くヒレの伸長具合は完全とは言えないが、バランスは悪くないので、成長に連れてさらに美しくなるだろう。体側とヒレに入る赤の柄はバランス良いが、黒の柄がもう少し入ると印象が変わるであろう。

フルムーンは背ビレが大きい事から、ハーフムーンよりも見ごたえがある個体も多い。 今回のコイベタ・フルムーンは、やっと出荷できるようになった生後3ヶ月ちょっとの個体なので、ちょっとボリューム感には欠けるが、若々しい分溌剌としていて、良くフレアリングも行う。 あと数ヶ月すれば、全体のボリューム感も出て素晴らしい魚になることだろう。
人気絶頂のニモベタの陰に隠れてしまって、あまり注目される事がなさそうなので、まだ若い個体なのだが、急遽ここで紹介する事にした。 価格的にも手頃だし、ぜひ日本でも普及して欲しい新品種と言えるだろう。 流行だけを追いかけるブリーダーだけではないのが、タイのベタ業界の凄さでもあるのだ。 あれこれ語るよりも、実物を以ていただいた方が話が早いので、コイベタ・フルムーンをたっぷりとお見せしたい。

各ヒレに入るかすり模様や、口先の黒が印象的な個体である。ダブルテールの魚を選ぶ際の一番のポイントは、ふたつに分かれた尾ビレの上下の大きさのバランスである。この個体の様に同じ様な大きさが良い個体で、どちらかが大きかったり小さい個体は避けたい。
体型やヒレの大きさ、色彩などは美しいが、体側の模様に多少物足りなさを感じてしまう個体である。このような柄の個体は、成長に連れて体側の黒い色素が抜ける傾向がある。それが良い方向に転ぶか、悪い方向に転ぶかは運でしかないだろう。
やや若いが、紅白のコイベタとしては、申し分ない色彩と体型である。ダブルテールのベタで注意したい点は、尾ビレの他、背ビレの前方の形態である。ここにヘコミなどがある個体も多いので、その様な個体は避けて選びたい。

ここ2ヶ月ニモベタに食傷気味の自分には、新たな気分で撮影する事ができた。 3月にタイに来て、約3ヶ月タイのベタシーンを見ているが、人気のニモやキャンディー、ギャラクシーなどにも、値段だけでなく魚の質に多少の変化が見える様になって来ている。 残念な事に6月末には帰国する予定で、次にタイに来るのは9月末になってしまうだろう。 その際には、タイのベタシーンはどの様に変化しているだろうか? 楽しみである。

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