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山崎浩二のSmall Beauty World

第32回「トルマリン・マウンテンクラブ」

トルマリン・マウンテンクラブの赤味の強い個体。ミャンマーに生息するマスクド・マウンテンクラブに似るが、黒の色彩の入り方が異なる。

2015年の8月、自分の相棒であるタイのトンから数枚の写真が送られて来た。そこには見慣れないカニの姿が。
どうやらいつもと違う場所に行き、そこで新たな種類のカニを見つけたようである。そこには数種類のカニが交尾をしている姿もあった。タイはこの季節は雨期の真っただ中。普段は穴の中に潜んでいるカニ達も夜間は活発に穴の外に出て活動しているようだ。この季節が彼らの繁殖期なのだろう。

巣穴から出て来たトルマリン・マウンテンクラブ。個体により色彩は変化に富んでいる。この個体のようにハサミがオレンジ色になる個体が最も個体数が多いようだ。

このようなシーンを見せられてしまったら、カメラマンとしては自分で撮影してみたくなる。しかし、生物の撮影はタイミングが非常に大切である。季節がずれてしまったら撮りたいシーンも撮れなくなってしまう。ちょうど8月は日本での仕事が忙しくて、すぐにタイには撮影に行けなかった。何とか仕事に目処がついたのが9月末。まだ雨期は明けていないのを確認して急いでタイに飛んでいった。

その新たなカニの生息場所は、以前このコラムでも紹介したクィーン・クラブの生息するカンチャナブリのトンパプンと言う場所である。しかし、いつも撮影に行っていた場所とは離れており、舗装されていない山道を車で2時間程山奥に入った場所である。もうタイと言うより、ミャンマーと呼んだ方がいい場所だ。標高的にもかなりな高地で、暑い場所では栽培が難しいキャベツなどを栽培している畑などが見られる。

とりあえず今晩の宿を探すが、観光客など来そうもないこの場所にはホテルなどない。バンガローを見つけたが、エアコンもお湯シャワーもないと言う。野宿するよりはマシなのので、そこに宿泊することに。とりあえず荷物を置いて、トンにその新たなカニの生息場所に案内してもらった。山間の畑の中を流れる小川の近くが生息場所であった。畑のあちこちに穴が無数に開いている。

夜の7時過ぎになり、もう辺りは真っ暗になった。カメラの防水対策も完璧にして雨を待つが、こういう時に限って雨は降らない。仕方ないので、昼間チェックした生息場所へ。そっと覗いて見ると、カニ達は半分体を穴から出しているが、人の気配を感じるとすぐに穴に潜ってしまう。想像以上に警戒心が強い。この辺りではカニが畑や水田に穴を開けてしまうので、害虫扱いされているようだ。日本のアメリカザリガニのような存在である。

どうも雨が降らないと、活発に穴から出て行動しないようである。そこで、じっと石のように動かずに気配を消してカニが出て来るのを待つ。夜の水辺でこうしていると蚊やブユなどの吸血生物の餌食となる。

水場で体を浸して水分補給中のトルマリン・マウンテンクラブ。ヤマガニの仲間だが、あまり乾燥した環境には強くない種類のようだ。
巣穴から半分体を出したトルマリン・マウンテンクラブ。このようなシーンを撮影するだけでも、大変な根気が必要だ。人影には敏感だが、ストロボの光にはあまり反応しないので助かった。

痒くて動いてしまったら、カニは穴の中に潜ってしまう。忍耐強く待つしかないのだ。3時間程頑張って色々なシーンを撮影する事が出来たが、目的の交尾のシーンの撮影は果たせなかった。やはり1ヶ月程前に来なければいけなかったようである。来年はもっと早く、雨期の最中に撮影に来るようにしたい。

同じ生息場所では、他にも2種類もカニの姿を見る事が出来た。水中に生息する大型のサワガニと、中型で腹部や脚の紫色が美しいサワガニである。とりあえず、大型の方にはブロンズ・リバークラブ、中型の方にはパープルベリー・リバークラブと名付けてみた。

同じ生息場所の小川の中には、大人の手の平程のサイズの大型のサワガニであるブロンズ・リバークラブの姿も見られた。中には腹部に子ガニを抱えたメスの姿もあった。
腹部や脚の色彩が美しい中型のサワガニであるパープルベリー・リバークラブ。脚や体色は個体差が見られる。
昼間でも水中の物陰を掬うと網に入って来た。

このカニは、タイの書物を調べたのだが、まだ名前が分からない。サワガニではなく、ヤマガニの仲間なのは間違いないだろう。色彩的にも変化に富んでおり。赤味の強い個体、オレンジ色の個体、黄色の個体、その中間の色彩の個体など、様々である。透明感のある色彩が美しいので、とりあえずトルマリン・マウンテンクラブと名付けてみた。非常に丈夫な種類で、飼育も難しくないようだ。大卵型で飼育下で繁殖も狙う事が可能である。ペット用としてこれから普及して事であろう。

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