水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第109回 スプレンデンスとインベリスのハイブリッド

オス同士で闘争する2025年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドのグリーンタイプ。ワイルドっぽい細身の体型に各ヒレのバランスが良く大変美しい。良く目立つのが尾ビレの軟条に沿って入る赤いV字模様である。

今年になってタイではワイルド系のベタではハイブリッドが流行っているようである。
流石にポンポンと新しい品種が出てくる訳ではないので、手っ取り早く目新しい魚を作るにはハイブリッドが近道なのかもしれない。
ただし、ワイルド系ベタのマニアはロカリティを重視する純系スタイルが昔から染み付いているので、ハイブリッドをあまり受け入れない層も多いと考えられる。
そう言う自分自身、ワイルドベタに関しては純系が一番と考えている。
しかし、エイリアンのようにハイブリッドから生まれた品種もあるぐらいなので、ハイブリッドを頭から否定するものではない。

元気よく闘争する2025年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドのブルータイプ。尾ビレの赤いV字模様や尻ビレにに入る赤はグリーンタイプと同様である。体側のブルーはスプレンデンスのワイルド系ではあまり見ないので、ブルーインベリスの交配が想像出来る。
2024年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドのグリーンイエロータイプ。これは体色に赤が入らないためにイエロー系のベンジャロンの血が入っていると想像出来る。体型は細身のワイルド体型だが、体高が高くなったらプラカットとの区別が付かなくなってしまう。

このコラム第104回で紹介したシャムオリエンタリスとインベリス・イエローテールとのハイブリッドなどは、その美しさに久々に感動したものである。
ワイルドはワイルド、ハイブリッドは改良品種と考えれば受け入れられるはずである。
今回、初めてスプレンデンスとインベリスのハイブリッドを紹介するが、実は昨年春にすでにスプレンデンスとインベリスのハイブリッドは2タイプ撮影済みであった。
美しい魚ではあったのだが、なんとなくインパクトが弱かった事もあり、何か機会があったら発表しようとお蔵入りにしていたのである。

黄色味が強い2024年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドのグリーンイエロータイプ。全体的なフォルムは非常に美しいのだが、やはりワイルド系の魅力は乏しく、プラカット寄りと言わざるを得ない。
2024年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドのグリーンレッドタイプ。尾ビレにはインベリス由来と思われる赤い縁取りが薄らと確認出来るが、2025年のハイブリッドのようなインパクトに乏しい。この2024年のタイプは人気が無かった為か現在では見られなくなっている。

2025年の秋にタイを訪問し、何かネタがないかと探していたところ、やっといつものワイルド系のお店から声がかかった。
それがスプレンデンスとインベリスのハイブリッドだった。
2024年の春にスプレンデンスとインベリスのハイブリッドを購入したのも同じ店だったので、それはもう撮影済みなのでと断ろうと思ったのだが、魚を見て驚いた。
1年前の魚とは全く異なり、尾ビレにはインベリスの三日月模様を彷彿させるような赤い模様が入っており、尻ビレにもインベリス由来の赤が見える。
さらに面白いのが、体側や各ヒレがブルーに飾られたブルータイプとグリーンに飾られたグリーンタイプがいることであった。
これは自分の琴線に触れる魚であったので、迷う事なく2匹を購入した。
ただし、メスはまだ小さいので育つまで1ヶ月程待ってくれと言うことであった。

2024年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドのグリーンレッドタイプの別個体。こちらの個体の方が尾ビレや尻ビレの赤味も強くインベリスの血筋は濃く感じられる。尾ビレの赤い縁取りの境界がもっとはっきりしていたら人気も高かっただろう。

こうして2025年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドと2024年のハイブリッドが揃ったので、本コラムで紹介しようと考えた次第である。
昨年のハイブリッドに比べて格段に派手になった2025年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッド、何か特別な交配でも行ったのかもと思い、これをブリードした店主に作出方法を尋ねてみた。
オスはベンジャロン系のスプレンデンスを使い、メスにはノーマルのインベリスを使用したF1なのだそうだ。
もっと複雑な交配をしていたのかと思いきや、意外と単純なものであった。

それでは昨年の色彩の異なるハイブリッドは?と尋ねると、これも同じようにスプレンデンスをオス親にインベリスをメス親にして作出したそうである。
つまりオス親に使用するスプレンデンスの色彩により、F1の表現型は大きく変わって来ると言う事らしい。
また想像であるが、2025年のハイブリッドの場合、メスのインベリスにブルーインベリスを使ったのではないか?
と言うのは、ハイブリッドのブルータイプの体色の雰囲気が非常にブルーインベリスに似ている印象を受けたのである。
たぶんそう頓珍漢な想像ではないだろう。

2024年のスプレンデンスとインベリスのハイブリッドのグリーンレッドタイプのメス個体。細身の体型は間違いなくワイルド系の血筋であるが、このタイプは現在では見られなくなっっている。タイでも人気の乏しい品種の市場での寿命は短い。

オス親をスプレンデンス、メス親をインベリスを使った交配でも、その交配パターンはかなり多いのだ。
またF1ではなく、F2、F3と交配して行った場合も選別交配の方法によって様々な結果が出て来るであろう。
実際、ブリーダーは昨年のハイブリッドがあまり評価されなかった為、今年は異なった交配を行なったのであろう。
結果は昨年よりも美しいハイブリッドを得られたので正解である。
さて、次は新たな交配にチャレンジするのか、それとも今回得られた魚を元に交配を続けるのかが楽しみである。

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