山崎浩二のSmall Beauty World

第25回「アルビノ・ベタ」

オス同士で闘争するクラウンテール・ベタ。左の眼が赤い個体がアルビノで、右はノーマル個体である。アルビノ個体は視力が悪い場合が多いが、この個体は左右共によく見えているようで盛んにフレアリングしていた。

養殖されている観賞魚の多くには突然変異で色素が抜けたアルビノと呼ばれる品種が数多く知られている。しかし、ベタだけはアルビノの品種が一般的でないというか、見つけるのさえ非常に困難である。それには訳がある。
ベタにおける完全なアルビノ(リアル・レッドアイ)は眼が見えないのだ。と言う事は餌を摂取する事もままならない。餌をたっぷり与えた環境では眼が見えなくても口元に来た餌を食べて育つ事も可能である。昔から数多く養殖されて来たトラデイショナル・ベタでは、極稀にこのように育ったアルビノの個体を見る事もあった。こうした個体を入手し、固定しようと繁殖を試みたいところだが、ここでも難関が立ちはだかる。眼も見えず虚弱体質のアルビノ個体は繁殖に使えないのだ。オスでも泡巣を作る事もなければ、眼が見えないので闘争する事も無い。もちろん求愛も不可能である。

プラカットのアルビノ個体。アルビノでもブドウ眼の個体の場合、撮影時のストロボの光の当たり具合により眼の赤さはやや異なって写る場合が多い。

このような理由でベタのアルビノ品種は長い間固定されなかったのである。同じアナバスの仲間でもパラダイス・フィッシュなどでは視力のあるアルビノ品種がいるのに、なぜベタでは視力がないのかは不明である。
タイでは観賞魚としてのベタが非常にポピュラーである。しかし、日本とは少し状況が異なり、ヒレの短いプラカットと呼ばれる品種の人気が圧倒的である。改良のスピードもこのプラカットでは非常に早く、毎年のように新品種がリリースされている。今年はコイカラーの品種が大ヒットしている。

同じプラカットの反対側。左右で眼の赤さに違いが見られるが、両眼共に視力は問題なく、どちら側に相手の魚が来ても闘争行動を行う。色素が消失した完全なアルビノではないので、ノーマル個体同様の色彩を持っている。
アルビノ・クラウンテールベタの闘争。手前がアルビノで奥がノーマル個体である。この個体はたまたまシルキーホワイトの体色だが、メラニン色素まで消失した完全なアルビノではないので、鰓蓋などに黒い色素が残っている。

これだけポピュラーで盛んに繁殖されているのに、やはりプラカットでもアルビノは非常に稀にしか見る事ができなかった。たまに視力がなく雄同士でも闘争もしないような個体が販売されている事もあったが、珍しいのかすぐに買い手が付いてしまう状況であった。 しかし、最近この状況が少し変化してきた。メラニン色素が完全に消失したアルビノ(リアル・レッドアイ)ではなく、ブドウ眼のアルビノが少しだけ出回るようになって来たのである。
このブドウ眼のアルビノ個体は、視力もあり餌を食べる事も出来れば雄同士で闘争もする。泡巣を作る事も可能なので繁殖も可能である。しかし、やはり体質的に弱いのかまだ数多くの繁殖は出来ないようである。その結果、市場価格もプラカットの最高級クラスと同等の値段が付けられている。高く販売できるとなるとタイのブリーダー達は黙ってはいない。現在、たぶん数多くのブリーダー達が種親を入手し、アルビノ・ベタを養殖しようと躍起になっているに違いない。そのような事もアルビノ・ベタの価格の高騰の要因になっているのであろう。
自分もアルビノ・ベタの撮影がしたくて、タイの知り合いのブリーダーに見つけたら教えてくれるように声をかけていた。
ある日、その知り合いのお店に行くと何やら魚をこっそりと見せてくれた。ブドウ眼ではあるが、見事なプラカットのアルビノのオスであった。値段を聞くと即決で買うとは言い難いハイプライスだ。購入するか迷っていると、撮影に使うなら貸してあげるから持って行っていいと有り難い言葉をいただいた。しかし、この好意に甘えていては日本人として情けない。バンコクのアパートに持って帰り撮影し、その写真を日本にいるベタ好きの友人にメールで送った。すぐにその魚を欲しいという返事が返って来た。これで知り合いにはベタが売れたお金が入り、自分は綺麗なアルビノ・ベタの撮影ができ、友人はレアな美しいベタが入手でき、みんな満足である。ちなみにこのアルビノ・ベタの写真は来年のタイのカレンダーにも使用される事になった。

アルビノ・クラウンテールベタのメス個体。アルビノのオスとかけ合わせればたぶん子供は100%同じアルビノが出て来る事だろう。

この知り合いのブリーダーはハイクラスのクラウンテールを生産する事で非常に有名で、多くの魚が日本にも送られている。後日、この知り合いからまたアルビノ・ベタの情報を頂いた。今度はプラカットではなく彼お得意のクラウンテールで、しかもペアだと言う。とりあえず魚を見せてもらうと、やはりリアル・レッドアイではなくブドウ眼であった。雌雄共に左右共に視力があり、オスは他のオスに盛んにフレアリングも行う。こちらは知り合いが撮った写真があったので、また別なベタ好きの知り合いにメールで送ってみた。やはり速攻で購入という返事が来た。今度のはアルビノのペアだけあって、前のプラカットよりもさらにハイプライスにも関わらずである。日本にもまだこのように趣味にお金を注ぎ込む正統派のマニアが存在するのは嬉しいことである。このクラウンテールのアルビノのペアは自分が帰国するまで、その知り合いのところでキープして頂き、大切に日本に持ち帰った。すぐに自宅で撮影し、友人のお宅に歓迎して迎えられた。いつもながら思うのだが、自分の仕事はこのように色々な協力者があって成り立っている。有り難い事であり、この場を借りてお礼を申し上げたい。

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