
水作さんにネットで前回のコラムを入稿した翌日、特に用事もなくぶらっとチャトチャックを訪れた。
それでもいつもの習性でベタ屋を覗いてしまう。
悲しい性である。
今回、そこで予想もしていなかった出会いが!
いつものワイルド系のお店で、店主がドヤ顔でこの新しい魚はどうだとお薦めして来た魚がいた。
それはちょうど前日にコラムのネタとして入稿したばかりのシャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッド。
今度はそれのイエローテール版だと言う。
確かに体色からはレッドが抜けており、各鰭はブルーとイエローで飾られている。
ぱっと見はインベリスのイエローテールだが、どこか雰囲気が異なる。
シャムオリエンタリスの特徴を引き継ぎ、頭部から体側にかけてブラックに色付いている。
前回紹介したハイブリッドのブラックフェイスのイエローテール版なのである。
すでに量産体制に入っているみたいで、10匹程の魚がガラス容器に入り並んでいた。
全体に特徴的には揃っているようだが、体側やヒレの色彩にブルーが強い個体とグリーンが強い個体が見られる。
この辺りはインベリスのイエローテールと同じである。
もちろん体色の異なるブルーとグリーンの個体を2ペア購入。
メスもしっかりとブルーとグリーンの個体がいるところが嬉しい。
モデル個体をしっかりとセレクトしてから、いつもの質問である。
今回のハイブリッドの作出経緯を尋ねてみた。

シャムオリエンタリスをオスに使い、メスにはインベリスのイエローテールを使ったそうである。
そして3代かけてこの色彩になるように固定していったと言う。
前回のハイブリッドは見た目がインベリスにかなり酷似していて、正直なところ一般ウケは難しいなと感じていたが、今回のイエローテールはその凄みを感じさせるようなブラックフェイスと言い、確実にマニアの心を引き付ける魅力を持っている。
改めて6年前にこのコラムで紹介したイエロー・インベリスを見てみると、全く雰囲気が異なる別な魚に変化している。
当時はイエロー・インベリスと呼ばれていたが、現在はインベリス・イエローテールと呼ばれる事が多い。
このインベリス・イエローテールには、インベリスにスプレンデンスが交配されている。
それに更にシャムオリエンタリスも交配されているので、3種類のハイブリッドと言う事になる。
これはエイリアンと呼ばれる品種と同じである。

こうして見ていると、スプレンデンス・グループと称されて纏められている各種が本当に独立した種類なのかと疑問になってしまう。
乱暴な考え方だが、泡巣を作り繁殖するこのグループは単なる地域変異の集まりと考えた方が納得する場合もある。
まあ、その辺りはマニアの仕事ではなく学者さんの仕事なので、研究の結果を待ちたい。
このブルーとグリーンのイエローテールのハイブリッドだけでも十分驚きなのに、今回のタイの滞在もあと少しを残すのみと言う状況になった際にまた新たなニューフェイスが登場した。
シャムオリエンタリスとインベリスのイエローテールのハイブリッドのシルバーとオレンジである。
インベリスのイエローテールにもブルーとグリーンタイプの他にシルバーはいたので、シルバーもいるだろうな?と考えていたので想定内ではあった。
しかしオレンジは全くの想定外であった。


ショップの店主はブルー、グリーン、シルバーと同系統だと力説していたが、自分の目にはどうも雰囲気が異なるように感じる。
ブラックフェイスは他のカラーのハイブリッド同様確かにシャムオリエンタリスの血筋を感じるのだが、どうも体側の鱗の色彩の雰囲気などが異なるのだ。
それに各ヒレのイエローのところが鮮やかなオレンジ色に染まっている。
インベリスのイエローテールでもオレンジ系統は非常にレアで、過去にも数個体しか見た事がないので、違和感を感じたのである。
しかし、1匹しかいない事から突然変異的に出現した事も考えられるし、高く売りつけられた訳でもないので、偽りの情報を流すメリットも無いだろう。
まあ、ブルー、グリーン、シルバーの他にもう一色モデルが増えたと喜んでおこう。
次回のタイ訪問の際はどんなニューフェイスが現れるか楽しみである。