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山崎浩二のSmall Beauty World

第103回 シャムオリエンタリス×インベリスのハイブリッド

オス同士で闘争するシャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッド。この個体は体側のブルーグリーンがベッタリと乗り、頭部のブラックも濃い。シャムオリエンタリスとインベリスの良いとこ取りのような個体である。

タイに取材に行った際に真っ先に向かうチャトチャック。
その中でも一番に足を運ぶのがワイルド系を扱うショップだ。
今回の滞在でも直ぐにチェックしに行ったのだが、パッと見たところそうそう目を引くような新しい魚はいない。
店主に何か新しいネタはないのか尋ねたところ、2つのお薦めを紹介してくれた。
ひとつはスプレンデンスとマハチャイエンシスのハイブリッド、もう一つはシャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッドである。
どうも何か新しい表現型のハイブリッドでも出現しないか、様々な組み合わせで交配を行なっているようである。

ブリーダー達のこうした試行錯誤により、今ではワイルド系の中ではポピュラー種として完全に定着したエイリアンのような品種が生み出されるのである。
今回のコラムではシャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッドの方を紹介しよう。
最初にこの魚を見せられた際、第一印象は単に体側のメタリック感の強いインベリスかと思った。
ところがハイブリッドだと教えられ、ガラス容器の隣同士がフレアリングする様子を見ていると、頭部の辺りの印象がちょっと異なる。
かなり黒みが濃いのである。

前の写真と同様のシャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッドのタイプ違いの個体。こちらは体型や体色はインベリスに非常に似ており、ワイルド系のベタに詳しくない人なら間違いなくインベリスそのものと思ってしまうだろう。
黒さが際立つブラックフェイスのハイブリッド。鰓蓋に多少ブルーが入るもののシャムオリエンタリスの面構えとよく似た印象である。こちらのタイプを選別交配した方が面白い個体が誕生しそうである。

これは新種と記載される以前はブラック・インベリスと称されていたシャムオリエンタリスの特徴である。
鰓蓋にブルーの光沢を有するインベリスに対し、ブルーの色彩を持たないシャムオリエンタリスは容易に判別可能である。
シャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッドは、ややインベリス寄りのブルーの色彩が鰓蓋に入るものの、オリジナルのインベリスよりはやや面積が小さいようだ。
複数が販売されていたこのハイブリッドを見ていると、2つのタイプがある事が分かった。
ひとつは頭部の黒みや体側のメタリック感が強いタイプ、もうひとつは頭部の黒みは強いもののかなりインベリスの血筋を強く感じさせるものである。

シャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッドのメス個体。オス同様にメス個体にも多少の色彩の違いが見られる。この個体では鰓蓋や体側のブルーがやや目立つ。メスだけ見るとハイブリッドとは分からず、インベリスと間違えてしまいそうだ。
前の写真と同じくシャムオリエンタリスとインベリスのハイブリッドのメス個体。メスでも個体により色彩はやや違いが見られ、こちらの個体では背鰭の赤が良く目立つが、これはシャムオリエンタリスには見られずインベリスの一部の個体群の特徴である。

当然体側にブルーがベッタリと乗り、頭部の黒みが強いタイプの方が観賞的価値も強く、マニア受けするのは間違いない。
店主もそれは良く理解しているようで、このブラックフェイスのタイプの方が欲しいようなら選んでファームから持って来てくれると話してくれた。
それにしても体型や色彩が非常に良く似ているシャムオリエンタリスとインベリスを交配しようと言う発想には驚かされる。
ワイルド系のマニアでもこの発想はなかなか無いだろう。
何か新しい物を生み出すには、このような柔軟な発想が必要なのだろうと、改めて感心してしまった。
店主にどのような交配を行なったのか尋ねてみた。

オスにはシャムオリエンタリス、メスにはインベリスを使ったそうである。
シャムオリエンタリスはここのところチャトチャックのベタ屋ではポピュラーになっているバンクラー産の個体であろう。
インベリスはハイブリッドの表現型に一番近いのはマレーシアのランカウイ島産の個体である。
しかし最近はこの個体群はほぼ出回っていないので、似たような色彩のクラビ産の個体群が使われている可能性が高い。
数多くの個体群が紹介されているインベリスであるが、現在クラビ産の個体群が1番ポピュラーで流通しているためである。

バンクラー産のシャムオリエンタリスのオリジナル個体。インベリスとの大きな違いは鰓蓋にブルーが入らない事である。体型や色彩はインベリスに酷似しており、全体に黒味がかった色彩のため、昔はブラック・インベリスの名称で呼ばれていた事もある。
マレーシアのランカウイ島産のインベリス。今回紹介しているハイブリッド個体に対側のメタリック感や背鰭の赤いところが非常に似ている。しかし最近販売されているのを見かけないので、ここのところ販売数が多くよく見かけるクラビ産の方が交配に使われた可能性が高い。

知り合いにこのハイブリッドの写真を見せてその感想を聞いてみたところ、あまり肯定的な意見は無いようである。
ワイルド系のマニアはやはりハイブリッドよりも純系のオリジナルを大切にするようだ。
まあ趣味の世界なので考え方や好みは人それぞれである。
自分はちゃんとハイブリッドである事を隠さずに販売するなら問題無しと言う考えである。
こうしたニューフェイスの価値は数年後に残っているか否かで答えが出るだろう。

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