水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第20回「カンボジアの謎の水草」

カンボジア・ロックプランツの水中葉。これは水が少なくなり半ば水上葉化した株である。水上化すると形態が全く異なる花芽が立ち上がって来るようだ。

今年4月、最乾期で猛暑の中カンボジアに撮影のために出かけて来た。
乾期のために魚の採集などに適している細流は水がなくなりカラカラ状態。何とか水が残っている細流も流れが淀み、水質悪化のために魚がいない状況であった。せっかくカンボジアまで来たのにこれでは面白くない。と言う事で色々と思案していたら、ある川のほとりで上流の滝までボートをチャーターして行けるという情報を得た。このような大きな川では小さな網では採集は無理である。漁師にでも頼むしかない。まあ、最悪観光できればという考えでボートをチャーターする事に決めた。

滝の流れの中に自生するカンボジア・ロックプランツ。かなりの流れなのだが、しなやかな葉質とがっちりした根で流されないように岩に活着している。

この時期のカンボジアは日なたに30分もいれば熱中症になるような猛暑であるが、さすがにボートでは日よけもあるし水辺を渡る風の力もあり、快適であった。水辺の景色をカメラに納めながら川を上流まで遡る。1時間ほど船を走らせると、次第に大きな岩肌が目立つようになって来た。
しばらくすると見事な滝へと到着。ここからは船を降りて、岩肌をロッククライミングしなければいけない。こういう際には大きな一眼レフのカメラは邪魔以外の何者でもない。
水辺の岩場は滑り易く、カメラをかばって自分の体にダメージを負いかねない。以前石垣島の山の中の渓流でカメラをかばって滑り、ケガをした嫌な想い出がある。最近はこのような状況の際はウォーター&ショック・プルーフのコンデジだけ持って行くようにしている。一眼レフのデジカメと同じとは言わないが、コンデジでもホームページに使うぐらいの画像なら十分撮影できる。と言う事で、ポケットにコンデジと虫除けクリームを入れ、滝の脇をロッククライミング。滝の上まで到着すると、そこはフラットな岩場を水が流れるただの川になっていた。魚を掬ってみるが、あまり魅力的な種類は見られない。

採集したカンボジア・ロックプランツの水中葉。ウエーブのかかった葉はポゴステモンに酷似しているが、葉質は全く異なり、こちらはしなやかである。
カンボジア・ロックプランツの自生している滝。この場所でも限られた場所にしか自生していない。増水期には完全に水没してしまう環境である。最も減水しているこの時期でなければ見つけられなかったであろう。

撮影もしたし、また岩場を下り船に戻ろうとしていたら相棒のトンが呼んでいる。呼ばれた場所に行ってみると滝の脇の流れの中に何やら緑色の物体が!最初は苔かと思ったが、よく見るとちゃんとした植物である。このようなシチュエーションに自生する植物には想い出がある。
10数年前にミャンマーで見つけたポゴステモン・ヘルフェリィである。ポゴステモンも段々になった滝の岩場に活着するように自生しているのである。このポゴステモンも発見当時は名前も分からなかったのだが、後に水草の世界では比較的知られた存在になった。このカンボジアの謎の水草はポゴステモンよりも更に早い流れの場所に自生していた。採集しようと試みるが、根が岩場にしっかりとくい込んでおり難しい。こういう草は無理矢理採ると草体を壊してしまう。

トンがナイフを取り出し、それでうまく岩から剥がしてくれた。滝の水が流れ落ちる場所に生えているので、撮影しているだけでもうシャツから短パンまでビショビショ。良く観察していると、水中葉だけでなく、花芽が上がっている株もある。これを見るとどうもポゴステモンではないようだ。採集した水中葉も感じは良く似ているが、質感が異なっている。堅くてもろいポゴステモンに対し、このカンボジア産の謎の水草の方がかなりしなやかで丈夫である。

やや赤みがかった美しい色彩を見せるカンボジア・ロックプランツの水上葉。自生している場所によって葉の形態や色彩には個体変異が見られる。水中葉だけでなく水上葉も魅力的である。
水上葉から花芽が立ち上がった株。花芽用の枝にはまた形態の異なる葉が見られる。この葉を見るとポゴステモンとは全く別グループの植物である事が確認できる。

それにしてもこの水草は自生している数が非常に少ない。滝の水が落ちる流れの中に10株ほどしか生えていない。辺りを見渡すが、他には自生している様子は見あたらない。このような場合、全部採集してしまうのは乱獲になってしまうので、数株だけ採集して持ち帰る事にしている。残っている株からまた数が増え、来年にでも訪れた際にまた楽しませてくれるだろう。

それにしても自生している場所と数が非常に限られているのが気になる。トンと一緒に水が干上がった滝の下をくまなく探す。しばらくしてどうやら水上葉のような株を見つけた。こちらは赤味を帯びた縮れのある葉が今流行のブケファランドラにも似た雰囲気だ。どの株からもひょろっとした茎が伸びている。この茎の先にはまた別な形態の水上葉があり、花が咲いていた。
花を見ると完全にポゴステモンとは別なグループの植物である事がわかる。花を見る限りではリムノフィラなんかに似ている雰囲気である。水上葉の株もやはり岩場に活着するように自生している。暑いかんかん照りの日なたではなく、やや日陰になった滝の岩陰にだけ自生していた。こちらも少数だけサンプルを採集。

花芽の付く枝の節からは子株が生えて来る。花の咲いた後、この枝が倒れて岩肌に着き、そこから新たな株となるのであろう。この子株からはすぐに活着用の丈夫な根が生えて来る。
カンボジア・ロックプランツの自生する滝の水質。炭酸塩硬度、総硬度は0に近い。PHは7.0、硝酸塩、亜硝酸塩濃度も0に近い。水温は場所により異なるが、滝の流れは25℃程であった。この水質から考察する限りでは水槽内での育成は難しくないであろう。

また慎重に岩場を下り船に戻り、元来た船着き場へと戻る。途中激しい雷雨に遭い、服から荷物までビショビショになってしまった。そのままタイとの国境まで戻り、カンボジアでの日帰り採集も終わり。また違う季節に訪れ、観察してみたいものである。紹介する際に名前がないと不都合なので、ここでは仮称としてカンボジア・ロックプランツと名付けさせていただく。いずれ詳細が判明したらまた紹介する事にしたい。

これらの草は無事にバンコクのホテルまで持ち帰った。思ったよりも丈夫な植物で、今も部屋の窓辺で水苔に植えて栽培している。水中に浮かべてキープしている水中葉の株からは白い根が伸びて来ている。花芽の付いた茎からは子株も伸びて来た。この子株からは似つかわしくない様なごっつい白い根っこが伸びて来ている。この丈夫な根で岩場に活着するのであろう。

花芽の付く枝の節からは子株が生えて来る。
花の咲いた後、この枝が倒れて岩肌に着き、
そこから新たな株となるのであろう。この子株からはすぐに活着用の丈夫な根が生えて来る。

本種は栽培も難しくなく、非常に魅力的な水草である。ほんの少数だけ相棒のトンが知り合い経由で日本にリリースした。いずれ趣味の世界でも親しまれる存在になる事であろう。あまりに自生している数が少ない植物なので、ここでは乱獲を避けるために採集場所の公表は避けさせていただく。ご理解を頂きたい。

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