水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第8回 「クラウンテール・ベタ」

伸長した軟条(レイ)がバランスよくクロスする尾びれを持つ魚を
クロスレイ・クラウンテールと呼ぶ。クラウンテール・ベタの中では
最高峰とされ、そのフォルムは見事である。

昨年の秋、タイが洪水の被害に遭っていた事は日本の報道でも嫌という程放送されていたので、日本の方でもご存知だろう。ちょうどその最中、私はタイに滞在していた。
ベタを初めとする熱帯魚のファームの多くは、バンコクから車で二時間程の場所にあるナコンパトムという辺りに集中している。洪水騒ぎの初期はこの辺りはまだ被害を受けていなかったのだが、次第に水はこの辺りまで浸水してきて、かなり多くの熱帯魚ファームが被害を被ったようである。

懇意にしているベタのファームがここにあり、近くを通りかかったので連絡をしたところ、ベタのビンを並べている辺りまで水が来たので、数万本のビンを移動させていて忙しいという話しが返って来た。あれだけのベタの入ったビンを移動させるのは大変な労力である。繁殖用の場所も使えなくなったので、しばらくはブリーディングもストップしなければならないそうである。天災(人災?)とはいえ、お気の毒な話しである。せっかくベタを見に行こうと思っていたのだが、こんな状況の中をお邪魔したら迷惑なだけである。

ブラックとホワイトの色彩が美しい
クラウンテール・ベタ。尾びれのレイの開き方は
まだまだであるが、全体のバランスは悪くない。
今回訪問したベタ・ファーム。他のファーム
同様、ウィスキーの瓶を利用して1匹ずつ 育成
している。
ずらっと並んだベタの瓶の上は人が歩いても
平気である。

ということで別なファームに連絡してみたところ、うちの辺りはまだ大丈夫なので、ぜひ寄ってくれという有り難い返事が返って来た。

このファームでは流行のハーフムーンではなく、クラウンテール・ベタを主に殖やしている。それも普通のクラウンテール・ベタではなく、コンテストレベルの魚がメインである。普通のクラウンテール・ベタと区別するために、こうしたクラスの魚はショー・クラウンと呼ばれる事もある。挨拶も早々に、すぐにベタのビンの上を歩き、魚を見せてもらう。あまりバンコクのサンデーマーケットなどのベタ屋では見られないような極上の魚がいっぱいいる。ベタ好きとしては、こんなハイグレードの魚を見せられたら涎ものである。久々にクラウンテール・ベタの撮影をしたいという意欲が湧いて来た。値段を聞くと、卸し価格とはいえ、想像以上の値段である。もちろん知り合いなので、かなり値引きしてくれているのだが、それでも並のハーフムーンの数倍はする。魚のグレードからすると納得の価格なので、厳選した10匹ほどをいただいてバンコクに戻って来た。

尾びれのレイのバランスや広がりは今ひとつ
であるが、ブルーとイエローのマーブルという
色彩は比較的珍しい。
ブラックのボディにレッドのヒレというバイカラー
の色彩のクラウンテール・ベタ。
尾びれの開きもよく、二本に分かれたレイの
広がりがもう少しあればクロスレイとなる。

さて、値段の話しになったので、ここでタイでのベタの値段の話しをちょっとしてみよう。ベタの本場タイでは、並ベタと呼ばれるトラディショナル・ベタが最も安い。次に安いのがクラウンテール・ベタである。
次にプラカット、ハーフムーン・ベタ、ジャイアント・プラカットが続く感じである。ただし、これはその品種でも並クラスの魚の値段で、それぞれのコンテストクラスの魚はこの限りではない。この値段の差というのは、管理の楽さに比例しているようだ。体質的に強健なトラディショナル・ベタやクラウンテール・ベタはブリーディングも容易でロスも少ない。それに対して、ハーフムーン・ベタ等は飼育にも手がかかり、ヒレが痛んだり形が悪かったりというようにロスも大きい。これが値段の差に結びつくのである。

この魚も尾びれのレイのバランスや開き具合は
そう良くないが、フォルム的にはかなり美しい。
ブルーのバタフライとマーブルという色彩も
見事である。

丈夫で価格も安価というのは買う側にとって都合がよいと思われがちであるが、趣味の世界ではそうはいかない。マニアにとってはワンランク下の魚と見られてしまい、悲しいかな低く扱われてしまう事が多い。

多数のベタ・ショップが立ち並ぶサンデーマーケットでも、なぜかハイグレードのクラウンテール・ベタを見る機会はそう多くはない。人気自体がプラカットやハーフムーン・ベタに比べると低いというのがその主な理由であろう。しかし、このファームで見たようなハイグレードの魚があまり市場に出回っていないというのも少なからず不人気の理由になっていると思われる。実際、今回写真で紹介したような、クロスレイ・タイプのクラウンテール・ベタはほとんど店では見かけない。このようなハイグレードの魚がもっと市場に出回れば、もう少し人気が出るのは間違いないと思われる。ただし、いつの間にか普及してしまったハーフムーンのようには量産できないらしく、そのためにまだまだ価格的にも高価なのは致し方ないところであろう。

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