水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第88回 スマラグディナ・ギター・カーボン

2023年1月 公開

オス同士で激しくフレアリングするギター・カーボン。大きなスペードテールは見事であり、その他のヒレも伸長し全体のフォルムも最高である。体側や各ヒレの金属光沢はやや暗めのライティングの方が映えるようである。

2022年は、タイ政府がコロナに関する規制を撤廃したお陰で春に続き秋にもタイに取材に出かける事が出来た。
この原稿を書いている2023年1月9日現在、タイ政府は一度撤回したコロナへの規制を再度強化したために観光業界に混乱を来しているようである。
まあ、この規制強化は中国だけにすると角が立つために、他国も含めた為なのは明らかであるが、年明けにタイへ観光旅行に行こうとしていた人にとっては大迷惑である。
もう何十年もタイを見てきた者からすると、こうした動向もタイらしいと笑って見ていられるが、影響を受けた当本人にとっては笑い事ではないだろう。
今年もスギ花粉の飛散がピークとなる3月頃からまたタイに避難する予定だが、その頃はどうなっているやらである。

全体のフォルムや色彩など、ギター・カーボンの特徴をよく表した理想的なオス個体である。ヒレや体側の煌めきは光線の角度により大きく変化するのも楽しいところである。興奮の度合いにより、体側は更に黒っぽく変化する。
前の写真とは別個体のオスのギター・カーボン。特徴であるカーボン光沢のある背ビレと尾ビレを大きく広げてフレアリングする姿は見事としか言いようがない。尾ビレにはいるスポット模様は個体により変異がある。

まあ、コロナ関係の話はこれぐらいにして、本題に入ろう。
今回紹介するのは、ベタ・スマラグディナ・ギターの改良品種でカーボンと呼ばれる魚である。この品種は2022年の春にタイを訪問した際にすでにタイの市場に並んでいた。
その際はギター・カーボンと言う商品名だけではなく、ギター・ブラックやギター・シルバーというのも使われていた。その際はたまたま目にした個体が、今回モデルに使用した個体程魅力的に感じなかった為スルーしていたのである。
2022年10月に再度タイを訪問し、いつものワイルド系中心の店で店主に勧めらた個体を見て、その独特の体色とフォルムにこれは撮影しなければと再認識し、即購入した。
この時は同時にギター・ジャイアントの素晴らしい個体も勧められたので、Wギターの買い物だった。同じギターの改良品種なのだが、この2品種はサイズやフォルム、色彩など、ベタに詳しくない人が見たら同種とは思えないだろう。
このギター・カーボン、展示水槽の間の仕切りを外すと、暗い褐色に色付いた水の中で怪しい煌めきを見せてくれた。
この特徴を見て、このカーボン(炭)と言うネーミングが絶妙だなと感心した。炭を割った際に見られるような金属光沢が背ビレや尾ビレに煌めいているのだ。
ただし、この金属光沢を写真で再現するのにはやや苦労させられた。

ギラギラとした炭の断面に見られるような金属光沢は、背ビレと尾ビレ、体側の背部付近に強く現れる。

今までのライティングだとこの特徴が上手く再現できないので、ストロボの位置や光量のバランスを変えながら、いつもより時間をかけての撮影となった。
モデル個体を購入した際は、その後に用事もあったので、この魚に対する質問はせずに、撮影後に再訪問して作出の経緯などを聞いてみた。
見事なスペードテールは、ギターにもスペードテールになる個体群がいる事は以前から知られており、撮影もしていたので納得であったが、この怪しい金属光沢はどこかで見た事があるような気がするのだが、思い出せないでいた。
ここで店主からこのギター・カーボンは、スペードテールのギターにエイリアンのシルバーを交配して作出したと種明かしをされ、目からウロコが落ちた。
確かにこの金属光沢はエイリアン系の魚の特徴である。どこかで見たような気がしていたのは、その為であった。

ギター・カーボンの若いオス個体だが、特徴のカーボンの煌めきが少なく、オリジナルのギターの特徴の方が強く出ている。尾ビレの伸長具合もいまいちである。成長につれてどのように変化するか興味深い。

それにしても、エイリアンの作出には既にギターの血は使われていたのだが、更に原種のギターにエイリアンを交配するとは、なかなか思い付かない発想で感心させられた。
ネーミングも絶妙だし、色彩もフォルムも美しいので、今後もワイルド系の定番種として親しまれる事だろう。
メスも揃ったペアで手頃な価格で販売されているのも嬉しいところである。
すでに日本の市場にも紹介されており、探せば入手も難しくなさそうである。
飼育に関してはギターと同様で問題ないので、ぜひ繁殖まで楽しんで頂きたい。
飼育の際の注意として、自分の失敗談を少し聞いて頂きたい。
このギター・カーボン、ワイルド系なので、飼育の際は飛び出さないよう飼育容器にきっちりと蓋をしていた。
改良品種のプラカットやハーフムーンなどと違い、ワイルドのベタやワイルド系の改良品種は運動が活発な為に、飼育水槽からの飛び出し事故が多いのは、ワイルド系のマニアにはあるあるであろう。

緊張して色彩が飛んだ状態のギター・カーボンのメス個体。ギターの特徴である尾ビレのスポット模様は確認できるが、カーボンの金属光沢はこのメスには現れていないようである。
落ち着いて体色も濃く現れたギター・カーボンのメス個体。スマラグディナ・ギターの特徴は良く現れているが、カーボンの特徴は尾ビレに僅かに見られるだけである。

そう言う自分も今までにどれだけ干物を作って悲しみに打ちひしがれた事であろうか。
カピカピに乾いた干物を水槽の外で見つけた際のショックと言ったら、同じ経験をした者同士でなければ理解できないだろう。
今回は飼育の際はキッチリと蓋をしていたのだが、撮影時にホンの少し目を離した隙にジャンプしてしまい、ギター・カーボンの生乾きを2匹も作ってしまったのである。
幸いにカピカピになる前に気が付いたので、水に戻すとピクリと動き出し復活した。
こうした際はタイのベタマーケットでは有名なSumaを使用するのだが、さすがに命は助かったものの見事だったヒレはボロボロである。
こうした魚はもうモデルには使えないので、繁殖用にするしかない。たまたまかもしれないが、2匹も続けて飛び出しさせてしまったのは初めてである。
ギター・カーボンだけでなく、ワイルド系のベタを飼育する際には飛び出しには要注意である。改めて痛感したので、皆様も気をつけて頂きたい。

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