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山崎浩二のSmall Beauty World

第87回 スプレンデンス・イエローカッパー

2022年12月 公開

オス同士で激しくフレアリングするスプレンデンス・イエローカッパー。尾ビレの中央は僅かに突出し、フォルムはスプレンデンスそのものである。オリジナルのスプレンスでは鰓蓋に入る赤いラインも、本種ではイエローである。この個体では背ビレ基底部に入っている黒斑が魅力的である。

このコラムでベンジャロン・イエローからそれを元に改良されたスプレンデンス・ブルーを紹介した流れで、さらにベンジャロン・イエローを使ったワイルド系の改良ベタを紹介しよう。初っ端から種明かしをしてしまっているが、今回紹介するのはスプレンデンス・イエローカッパーである。これはいつもお世話になっているチャトチャックのワイルド系のお店で、まだこの2ペアしかいないんだけどと見せられて、値段も聞かないうちに購入した魚である。これしかいないと言われると、今買っておかないとと言う強迫観念に襲われてしまう。まあ、これは多くの場合店主の営業トークだったりするのだが、納得の上でお買い上げである。

最初の写真とは別個体のスプレンデンス・イエローカッパーのオス個体。こちらの個体では尾ビレのエッジが黒く縁取られているのと、尻ビレ前部のカッパー色が目立っている。個体識別は背ビレのスポット模様を見れば容易である。
黄土色という表現が妥当なボディの色彩だが、ここにカッパー光沢の鱗が良く映える。派手過ぎない山吹色の各ヒレも美しい。尾ビレ、尻ビレ、腹ビレの伸長具合も非の打ち所がない。闘争性はスプレンデンスそのもので、オス同士では激しく闘争し、怯える様子もない。

これとは違うが、今日持って来て店に並べたばかりで、まだ誰にも買われていないと聞くと、誰かに買われてしまう前に良い個体を抜いて置かなければと言う気持ちになり、これもまたお買い上げしてしまう羽目になる。タイの商売人もかなり人間心理を読んだ営業をするようになったものである。ベタをセレクトする場合、すでに水槽に誰かが購入済みの印などが書かれていると、急激に購買意欲が低下する。やはり撮影のモデルはトップの個体を使いたいという思う気持ちは昔から変わらない。湯水のようにお金が使えれば、苦労しなくてもトップレベルの魚を入手する事が可能であるが、貧乏カメラマンは自分の足で稼ぐしかないのが悲しいところである。

スプレンデンス・イエローカッパーのメス個体。緊張して色彩が飛んだ状態であるが、ヒレや鱗に光沢が確認でき、ヒレも僅かにイエローに染まっている。腹部には卵巣が白く透けて見えており、繁殖に使えるのも近そうである。

さて、この2ペア限定のスプレンデンス・イエローカッパー、お店で見た時からオス2匹の表現型が僅かに違う事が確認出来た。新しく紹介する品種の場合、最低2ペアは購入するのだが、2匹の表現型が異なるのはそれ自体が情報にもなるので歓迎である。このスプレンデンス・イエローカッパー、名前を聞いてその姿を見た時から、どのような交配で作出したのか自分なりに推測していた。最近、新しい改良品種を見ると、自分なりに交配方法を推測するのが楽しみになっている。まあ、ベタの交配クイズと言えるだろう。

今回のスプレンデンス・イエロカッパーの場合、直ぐにベンジャロン・イエローが交配に使われている事は分かったのだが、カッパー色をどこから持って来たのかが、分からなかった。カッパーと呼ばれる色彩を持つ魚は、プラカットだけではなく、ワイルド系でもスマラグディナ、マハチャイエンシス、エイリアンなどがいる。ここで前回のコラムで紹介したスプレンデンス・ブルーの交配例を思い出した。この読みは当たりで、店主に答えを聞くと、スマラグディナ・カッパーを交配に使ったそうである。前回紹介したスプレンデンス・ブルーや今回紹介しているスプレンデンス・イエローカッパーも、色彩はともかく体型その他は原種スプレンデンスそのものである。まあ、元々両種の体型はかなり似てはいるが……。

前の写真とは別個体のスプレンデンス・イエローカッパーのメス個体。こちらの個体の方がボディも薄っすら黄色味を帯びている。このように同系統のメスが揃ってリリースされているのは、非常に有難い事である。

スプレンデンスにスマラグディナを交配した場合、基本となる色彩以外はあまり表現型に大きく影響しないようである。自分としては、スマラグディナの特徴である鰓蓋の鱗の質感等が遺伝しないのが不思議に思われるのであるが。あくまでスプレンデンスとしての表現型に拘り、選別淘汰しているなら納得である。今回はニューフェイスのリリースであるが、メスも一緒にペアで販売されていたので安心であった。

今回の滞在中、スマラグディナ・ギター・ジャイアントと言う素晴らしい魚を入手したのだが、オスのみでまだメスは販売されていなかったのが大変残念であった。新品種の場合、未だにペアでリリースされない事があるのが現状であるが、これは商売として改めるべき点だと個人的には考えている。スプレンデンス・イエローカッパーは、写真を見てもらえば分かるように万人受けする派手な色彩ではない。むしろ玄人好みのする色彩と言えるだろう。自分的にはかなり好みの魚だったので即買いであったが。スプレンデンス・イエローカッパーの交配に使われたベンジャロン・イエローとスマラグディナ・カッパーに関してはこのコラムの過去の記事をご覧頂きたい。

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