山崎浩二のSmall Beauty World

第2回「西表島のハヤセボウズハゼ」

最近、アクアリウムの世界でも小型ボウズハゼの仲間は色々な種類が輸入されるようになり、アクアリストを楽しませている。 
小型ボウズハゼの仲間は姿が美しいだけでなく、水槽内に発生する藻類も食べてくれるので、掃除屋さんとしても役に立つ魚なのである。 
まあ、そのパワーはオトシンクルスやイシマキガイには完全に負けてしまうが。

アクアリウム・トレードでインドネシアなどからボウズハゼが入荷するようになったのは比較的近年になってからで、20~30年前は入手が難しい魚であった。 
日本産の淡水魚に興味のある方なら当たり前のように知っている事であるが、このボウズハゼの仲間は国内でも、沖縄には多数の種類が生息している。 
海外産の種類の入手が難しかった時代は、この国産ボウズハゼの仲間の飼育を楽しむしかなかったのである。 
その中でもスターは、ナンヨウボウズハゼで、その美しいオレンジ色の色彩とフォルムは熱帯魚にも負けない魅力を持っている。 

自分がまだ学生時代、卒論のエビの研究のために石垣島や西表島を訪れた際には、どこの川を覗いても、美しい色彩をきらめかせたこのナンヨウボウズハゼが乱舞していた。 
残念な事にこの様子は現在では、西表島の一部の河川でしか見る事ができなくなっている。 
石垣島などでは河川の改修が進み、護岸工事されてしまった事や、開発のための赤土の流出などの環境破壊のため、絶滅はしていないが、生息数が激減してしまっているのである。

ライフワークである淡水エビの撮影のために、学生時代から毎年のように石垣島と西表島に通っている。 
普通種であるナンヨウボウズハゼの他、個体数の少ないフデハゼ、カエルハゼ、ヨロイボウズハゼなども、たまに目にして来たが、何と言ってもレアなのは、ハヤセボウズハゼである。 
この30年間で、まだ2回しかお目にかかっていない。 
一番最初に彼らに出会ったのは、もう20年程前に西表島の一河川であった。 
最初はナンヨウボウズハゼのブルータイプだと思っていたのであるが、ハゼに詳しい知人に写真を見せたら、希種であるハヤセボウズハゼだという。 
確かに第一背びれがナンヨウボウズハゼのように鎌形に伸長しておらず、胸びれに細かいスポットも入っている。 
青みを帯びた色彩が良く似たコンテリボウズハゼとも、この胸びれのスポットの有無で容易に判別できる。

それ以来、彼らに出会う事がなかったのであるが、二年前に西表島を訪れた際に、久々に出会う事ができた。 
その河川はまだ昔のようにナンヨウボウズハゼが多数群泳しているような自然が残った場所なのであるが、水中を見ているとメタリックブルーに輝く一際目立つ魚がその中に泳いでいた。 
数年ぶりに出会った彼らの姿は、旧知の友人に久々に会うような懐かしさを感じさせてくれた。 
一部の文献によると、ハヤセボウズハゼは日本の固有種であるとされている。 
しかし、この個体数の少なさは普通の魚では有り得ない。 
この仲間は両側回遊魚である事から、太平洋の他の島々にもっと個体数の多い本当の生息場所があるように思われる。 
日本では希種とされるフデハゼ(アカボウズハゼ)なども、インドネシアでは生息個体数が多いようで、まとまって輸入されるのはそうした理由である。 

近年、他の太平洋の島々に生息するようなボウズハゼの仲間が、沖縄に生息しているのも確認されている。 
この仲間は両側回遊魚であるから、海流の流れなどにより、たまたま稚魚が流れ着き遡上した可能性が高い。 
死滅回遊なのか、それとも新分布となり、生息域を広げていくのか興味深いところである。

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