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山崎浩二のSmall Beauty World

第78回 チャーン・ベタ

2022年1月 公開

オス同士でフレアリングするスーパーホワイト・チャーン。純白の体色は完璧で、体型やヒレの形態も非の打ち所がない。本品種の特徴である胸ビレのサイズは尾ビレよりも大きいぐらいで、そのエッジも美しい。コンテストに出品しても恥ずかしくない個体といえる。

今まで数多くのベタを紹介して来たこのコラムであるが、まだ一度も取り上げていない品種がある。それが今回紹介するチャーン・ベタである。
本種はタイで作出された品種で、その大きな胸ビレが特徴である。現地ではフー(耳)チャーン(象)あるいはチャーンと呼ばれている。
日本では商品名としてデ○ズニーのキャラクターであるダンボが使わている事が多いようだが、商標の問題等がありそうなので、自分はこの名前は使用しない。通称名がある場合、出来る限り作出された国で使われているオリジナルの名称を使いたい。

この個性的なベタを初めて見たのは、確か2011年ごろだったと記憶している。
撮影した写真のフォルダを見てみると、2011年の秋頃に初めて撮影をしている。
バンコクのサンデーマーケットでこの品種を初めて見た時、このような変わった視点で改良を行うとは!と驚いたものである。
チャーン・ベタが登場する以前から、ラベンダー系やマスタードガス系のベタの中には胸ビレが白くなり目立つ個体もいたので、そこが面白いと気付いたブリーダーがいたのであろう。
後にグッピーでも同様に胸ビレの大きい品種が作出されたのも驚きであった。

ラベンダーバタフライ・チャーンのオス個体。この色彩パターンは本品種の初期から主流であるが、誰からも好まれる色彩で根強い人気がある。胸ビレのエッジも綺麗に伸長していて美しい。
このようなブルーレッドの色彩もチャーン・ベタでは見かける機会の多い色彩である。この個体では胸ビレの大きさや左右のバランスもいいのだが、唯一の欠点はエッジが多少バサついてしまっている事だろう。チャーン・ベタの胸ビレは傷付き易いので、扱いには注意が必要である。

初期のチャーン・ベタはラベンダーやマスタードガス等色彩的にはバラエティが乏しかった印象が強く、その状況は長らく変わらなかった。またリリースされた初期は、その胸ビレも左右で大きさが違ったり、各ヒレのエッジがガタついている個体も多く、撮影のモデルを選ぶのは大変難しかった。たぶん胸ビレを大きくする遺伝子と他のヒレのエッジがガタガタになってしまう遺伝子が連携しているのかもしれない。

マスタードガス系のチャーン・ベタのオス個体。チャーン・ベタの中ではマスタードガスはラベンダーと並んで一般的な色彩である。胸ビレのエッジが綺麗なだけでなく、各ヒレの形態も美しく、チャーン・ベタの見本のような個体と言える。
ラベンダー系の美しい色彩のチャーン・ベタのオス個体。綺麗なラウンド状の胸ビレは痛まずに育った証であろう。チャーン・ベタの模範とも言える個体であるが、このような個体は数少ない。

現在でもチャーン・ベタをセレクトする際には各ヒレのチェックは欠かせない。
せっかく面白い色彩の個体を見つけても、各ヒレのエッジに難がある場合も多く、モデル選びの難易度はベタの中でも高い。
最近では色彩のバラエティもかなり増えてきた印象はあるが、それでもまだ他の品種のような多彩さには欠ける短所がある。
初期のチャーン・ベタは、胸ビレが通常の倍ぐらいの大きさであったが、この点に関しては改良が進み、現在では尾ビレよりも大きな見事な胸ビレを持った魚を見る事も多い。
本品種の特徴であるこの胸ビレだが、飼育の際に注意して欲しい点がある。他のヒレと異なり、チャーン・ベタの胸ビレは裂けたり傷付いたりした場合、再生しにくいのである。
プラカットの場合、尾ビレや尻ビレが多少裂けたり傷付いたりしても、数日で元通りに治るのだが、チャーン・ベタの胸ビレはこうした治癒力が乏しいのか、傷付いたままになってしまう事が多い。

チャーン・ベタとしてはかなり変わった色彩の個体である。スカイブルーとホワイトの色彩が美しく、各ヒレのエッジも歪みがなく美しい。こうした個体はショップをハシゴして足で探すしかないだろう。
スチールブルーとレッドの配色が美しく、ラウンド状の大きな胸ビレも非常に美しい個体である。チャーン・ベタは初期こそかなり高価であったが、現在では手頃な価格で入手できるようになっているのも嬉しいところだ。

そのため網で掬う際などにも、出来るだけ胸ビレにはダメージを与えないように優しく扱いたい。これは自分達カメラマンの問題なのだが、チャーン・ベタの撮影は大変難しく、普通のプラカットの10倍ぐらいの時間を要してしまう。特徴であるヒラヒラしている胸ビレが綺麗な形で写らなかったり、ストロボ光の影としてボディに映り込んだり、他のベタよりも大変なのである。モデル選びも難しい上に、撮影も大変なので、無意識で被写体として避けていた事もあり、自分のベタの写真のストックの中ではダントツに数が少ない。そのため最近は意識して良い個体を見つけた際は撮影するように努めている。

今回紹介しているチャーン・ベタの中では最もレアなカラーリングの個体である。色彩的には申し分ないのだが、胸ビレの形態やボリューム、尾ビレの歪みなどが残念なところである。色彩と形態の両方が伴った個体を探すのは苦労する。
チャーン・ベタのメス個体。本品種では最もポピュラーなラベンダー系の色彩の個体である。メスはオスに比べると多少胸ビレの大きさは小ぶりであるが、特徴ははっきりとしている。

最初はプラカットだけであったチャーン・ベタであるが、すぐにハーフムーンも現れ、各ヒレが大きいハーフムーン・チャーンは人気が高い。水槽に入っているチャーンベタの動きもコミカルで可愛いものだが、以前ベタのブリーダーのところでコンクリートの池に多数の幼魚が泳いでいるのを上から見た際には、多数の若い個体の白い胸ビレがピロピロと動いている様子は物凄く印象的であった。歴史は浅いものの、すっかりとベタの品種としては認知されたチャーン・ベタ、今後はもっと色彩バラエティが増えると更に人気が高まるであろう。

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