水作株式会社

山崎浩二のSmall Beauty World

第70回「ニモベタ・フルムーン」

バンコクに滞在中は、いつもなら週に数回は通うチャトチャック市場だが、タイも新型コロナウイルスのために非常事態宣言が出され、餌などを扱っている店以外は営業禁止中(日本の営業自粛とは違い、罰則あり)である。
なので、ここのところすっかりご無沙汰となっている。
日本も同じだと思われるが、これは新型コロナウイルスの拡散防止のために仕方のない措置である。
取り敢えず人が集まる状況を作らない事が、クラスター発生を防ぐために大切なのである。

美しいヒレをたなびかせフレアリングするニモベタ・フルムーンのオス個体。この個体はオレンジ色とレッドの典型的なニモベタのカラーリングが美しい。各ヒレの身長具合やバランスも申し分ない。

日本に比べ厳しすぎると思われるタイ政府の新型コロナウイルス対策であったが、4月末の段階では新規感染者の数が一桁となり、その効果がはっきりと表れて来た。
対する日本の方はと言うと、収束にはまだ時間がかかりそうなのが、残念である。
もう新型コロナウイルスの話題は十分と言うコロナ疲れの方々も多いかと思うので、この話題はこれぐらいにして、本題に移ろう。
チャトチャックのベタ屋での撮影モデルの入手が難しくなったので、懇意にしているベタのブリーダーへ連絡してみた。
このご時世なので、少しでも嫌がられているなと感じたら、訪問を控えようと思っていたのだが、心配は杞憂であった。
航空会社の都合などで輸出もキャンセルされ、経営的にはかなり打撃を受けていると思われるが、歓迎してくれると聞き、喜んで訪問させて頂いた。
彼は、タイのブリーダーとしては珍しく英語が話せるので、意思の疎通は何も問題ない。
いつもベタに関してや、市場の動向などについてありがたい情報を頂いている。

各ヒレは典型的なニモベタのカラーリングだが、体の部分がやや暗色の色彩となっている。その対比が面白く、魅力を増している。頭部付近が白く色彩が抜けているのもアクセントになっているようだ。
ニモというよりはキャンディと呼んだ方がしっくりくる個体である。白い面積の多いヒレとボディの体色が良いバランスとなっている。各ヒレの軟条に歪みもなく綺麗に伸長している。全体のフォルムもフルムーンと呼ぶにふさわしい形態だ。

挨拶の後、ここのところのタイ観賞魚業界の動向などを話し、さっそく魚を見せて頂いた。
仕入れに訪問する外国人がいないのか、いつもより高レベルの個体が数多く残っているように感じられた。
その中で、彼の奥さんにオススメと言われたのが、ニモベタのハーフムーンのダブルテール。
このコラムの読者であれば、もうご存知かと思われるが、ハーフムーンのダブルテールは、その全体のフォルムからフルムーンと呼ばれる。
この連載でも、ニモベタが登場した当時から関連する様々な品種を紹介して来たが、まだ自分が納得のいくモデルに出会えていないために紹介していない品種がある。
それはニモベタのハーフムーンである。
今となっては、ハーフムーンもかなりの個体数が流通するようになり、入手はそう難しくない。
価格も適当にこなれている。
だが、色彩は良くても、ヒレの形状が悪かったりして、自信を持って紹介するレベルの魚にまだ出会えていないのである。
もちろん品種として押さえておかなければいけないので、そこそこの魚はセレクトして撮影済みである。
だが、このコラムで自信を持って紹介するレベルの個体はまだ撮影していないのだ。
と言う訳で、ニモベタのハーフムーンの紹介はまだ先になりそうだ。

典型的なニモベタのカラーリングだが、赤い色彩が縞模様のようで見応えがある。各ヒレにもクセがなく、伸長具合も美しい。万人受けする個体と言えるだろう。

今回ファームでオススメされたフルムーンの完成度は高く、見た瞬間に撮影したいと思う個体ばかりであった。
紹介する順序としてはやや違和感はあるが、今回はこのニモベタのフルムーンを紹介しよう。
昨年末まで、チャトチャックのベタ屋はかなりチェックしていたが、この品種は目にした記憶がないので、本当にここ最近になってリリースできるようになったのであろう。
ショールームで、見易いようにガラスケースに入れてある個体からまずモデルを選ぶ。
ずらっと育成用の瓶が並ぶファームの方にもいるそうなので、どの辺りにいるのかを教えて頂き、そこでも瓶を一本一本チェックしていく。
いつもながら感心するのが、何万本も育成用の瓶が並ぶファームで、どの辺りにどのサイズの品種がいるのか把握している事である。
物覚えの悪い自分の頭では、メモでも書いて貼っておかないと、絶対に忘れてしまう。
興味のない人には拷問のようなベタ・ファームでのセレクトも、好きな人間にとっては宝探しのようにワクワクする作業だ。
たまにお宝のような個体を見つけた際の満足感は何物にも代え難い。
ただし、熱帯のクソ暑さと腰を屈めての作業には肉体的な苦痛も伴うので、一度経験したら十分と言う人も少なくない。
ファームに並べられた瓶は汚れているため、中の魚を確認するのも一苦労である。

オレンジ、レッド、ホワイトの体色のバランスが美しい個体である。ヒレの伸長具合などもほぼ完璧である。ニモベタは2匹と同じパターンの個体がいないので、自分好みの個体を探し出す楽しみが大きい。
典型的なカラーリングのニモベタだが、やや赤みの強い個体である。この個体の全体のフォルムを見て貰えば、なぜダブルテールのハーフムーンがフルムーン(満月)と呼ばれるか納得できるであろう。

まず色彩をチェックし、次にヒレの形態をチェックする。
フルムーンの場合、他の品種よりもチェックする項目が多いので大変だ。
まずはふたつに分かれた尾びれのバランスである。
やはり大きさが均等に近いのがベストだ。
ダブルテール独特の大きな背ビレだが、ここも重要なチェックポイントとなる。
背ビレ前方がへこんだり歪みのある個体が結構いるので、チェックは欠かせない。
こうして荒選びをした後、最終的にもう一度選別を行う。
見逃していた欠点などに、この段階で気が付く事も多い。
半日ほどベタのセレクトをすると、その晩は非常によく眠れる。
それだけしんどい作業なのである。

このようにして、セレクトしたのが、今回ここで紹介する写真の個体である。
なるべく同じような色彩は避け、異なる色彩パターンの個体を選ぶようにしている。
フォルムに関しては、ある程度スタンダードがあるが、色彩の好みに関しては個人でかなり好みが分かれるところであろう。
現状では、新型コロナウイルスのためにアフリカや南米、ヨーロッパからの航空便が止まってしまっているため、観賞魚の輸入にもかなり大きな影響が出ているようだ。
幸い便数は減っているが、バンコクからの輸出は可能である。
と言う事でベタの日本への供給は特に問題ないようだ。

やや若い個体でヒレの伸長具合はまだイマイチであるが、全体的にガラス細工のような雰囲気の色彩は可愛らしい。このような個体の場合、透明なヒレにどのようなバランスで色彩が入るかで印象は大きく変わってしまう。

例年なら、これからの時期保温なしで飼育できるようになるため、ベタの消費が伸びて来る。
外出の自粛でステイホームの状況では、観賞魚の飼育は格好の暇つぶしや癒しになるだろう。
この機会に、ぜひ美しく生態も興味深いベタの飼育に取り組む人が増えて欲しいものである。

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