水作株式会社

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山崎浩二のSmall Beauty World

第69回「ゴールデン・トリプルクロス」

オス同士でフレアリングを行うゴールデン・トリプルクロス。トリプルクロス特有の尻ビレと尾ビレの不規則な黒いスポット模様がない分、やや面白みは欠けるが、フォルムも美しく十分魅力的である。ここから更なる改良を期待したいものである。

日本程の感染者が出ていないものの、ここタイも新型コロナウイルスの影響で現在大騒ぎである。
現在のタイ政府は軍政であり、日本の不甲斐ない政府のように弱気ではない。
かなりの強気で新型コロナウイルスに対して厳しい対策を打ち出してくる。
弱気の日本と比べると、ある意味頼もしく感じる程である。
そのお陰か、バンコクではマスクや消毒用ジェルの入手には全く苦労しない。
今回は感染者の増加が見られると、すぐに人の集まるようなショッピングモールや娯楽施設、マッサージ店などを閉鎖した。
更に感染者が増えると、非常事態宣言が発令され、レストランやお店も閉鎖され、開いているのは生活必需品を扱うスーパーマーケットやコンビニだけとなっている。
その辺りは、日本のニュースでも流れているだろうから、我々アクアリストが気になるバンコクのペット事情を少しお伝えしよう。
ペットも生き物であるため、当然人間と同じように食べ物などが必要である。
そのため、通常の商店が閉鎖されている中、餌関係を販売しているショップは営業を許されている。
サンデーマーケットの名前で親しまれているチャトチャック市場も、非常事態宣言の発令と共に閉鎖され、駐車場に車を乗り入れる事が出来なくなっている。
幸い近くの駐車場は営業しているので、そこに車を止め、餌の購入ついでに中の様子を確認してみた。
ペットのエリアを少し回ってみたが、やはりフード関係以外の店はほとんど閉まっている。
当然、JJモールやミックス・チャトチャックなどの併設されているショッピングモールは完全に閉鎖されている。
自分のテリトリーであるベタのショップが数多く営業している通称ベタ通りへ行ってみた。

上の写真と同じ個体の反対側。体色には個体によりやや差が見られるようだ。この個体は鰓蓋から体側にかけて、ややピンクっぽい色彩がうっすら見える。体高の高さにややプラカットの血筋を感じてしまう。

9割の店は閉まっていたが、数軒の店は開いていた。
ベタも生き物なので、餌を与えたり水換えなどの世話は必要である。
そのために店を開けているのであろう。
この辺りのショップは、ほとんどが顔馴染みである。
あるショップの店主が手招きするので、見てみるとそこには見慣れない色の魚が!
聞くと新品種で、ゴールデン・エイリアンだと言う。
エイリアンは日本の方は聞き慣れない品種だと思うが、自分が以前このコラムでトリプルクロスとして紹介したワイルド系のハイブリッドのタイでの販売名である。
まさかこの非常時に、ここで新品種が見られるとは思ってもみなかった。

この魚について尋ねると、元となった魚をお前は1年前に見ているはずだと店主が語った。
記憶を辿ると、確かにこの店で1年前にゴールデンのトリプルクロスを見ていた事を思い出した。
確かその際は、その個体の尾ビレの一部が欠けており、価格もかなり高価だった事から、購入を諦めていたのだ。
今回の魚は、このゴールデンのトリプルクロスのオスに、メスのカッパーのトリプルクロスを掛け合わせて作出したそうである。
いつも自分が魚を購入する際はペアで欲しがるのを覚えていたのか、店主はメスはまだ小さくて出せないけど大丈夫か?と聞いてきた。
とりあえずモデルには、オス個体だけでも十分である。
と言う事で、すっかり購入する気になって値段を尋ねると、予想通りかなりの価格であった。
通常なら、熟考するところだが、タイは現在この状況である。
お店の売り上げも激減して、生活も苦しいはずである。
いつも世話になっているので、こういう際には少しでも売り上げに貢献したい。
と言う事で、モデル用に2匹購入する事にした。
タイではこのような行いを、タンブンと呼ぶのだそうである。

上の写真とは別のゴールデン・トリプルクロスのオス個体。写真にすると良く分かるのだが、この2個体で体側の色彩の違いが顕著である。フォルム的には申し分のない個体と言える。2個体に言える事だが、尾びれの白い縁取りにもプラカット交配の可能性を感じる。

今回、購入したゴールデン・トリプルクロスは、非常に元気で闘争性が強い。
持ち帰って容器に移しても、すぐに隣り合った容器越しにガンガンとフレアリングを行なっている。
こういう個体は撮影が非常に楽である。
半日ほど落ち着かせ、撮影用水槽に移しても、盛んにフレアリングを行なっている。
ものの1時間程で撮影は完了。
どの魚もこのように簡単に撮影させてくれると楽なのだが・・・。

今回のゴールデン・トリプルクロスには、この品種の特徴である尻ビレや尾ビレの黒いスポット模様が入ってない。
たぶん黒い色素の欠乏によりゴールデンの体色になったと考えられるのだが、その際にこのスポット模様も消失してしまったのであろう。
これは非常に大きいマイナスポイントなので、ぜひ今後の改良で何とかして欲しい。
このスポット模様がないと、見方によっては多少スリムなプラカットに見えてしまう。

上の個体の反対側。鰓蓋の膜の縁取りと鰓蓋後方の鱗にやや黒い色素が残っている。なので、この黒い色素を尻ビレや尾ビレのスポット発現に使えないものだろうか?通常のトリプルクロス同様に各ヒレにスポット模様が入ったら、相当魅力的な魚となるだろう。

今回購入した店主の語った作出経緯には嘘や隠し事は無いと信じたいのだが、自分にはこの魚にプラカットを交配したような匂いを少し感じるところがある。
これに関しては、また会う事があれば、詳しく聞いてみたい。
またメスもリリースされたら、撮影して機会があれば紹介しよう。
このご時世であるから、このゴールデン・トリプルクロスが日本へ輸入される事は難しいと思われる。
新型コロナウイルスが終息し、生活が落ち着いた頃には、入手の機会もあるだろう。
タイでも日本でも、今はとにかく外出を控え、新型コロナウイルスの拡散を防ぐことが重要である。
ぜひ、外出せずに部屋で楽しめるベタの飼育を楽しんで頂きたい。

 

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