水作株式会社

山崎浩二のSmall Beauty World

第67回「ブルー・インベリス」

オス同士でフレアリングするブルー・インベリス
煌めく体色を見せながらオス同士でフレアリングするブルー・インベリス。この美しいブルーはプラカットから受け継いだものだが、尾ビレと尻ビレの赤はインベリスの一番の特徴である。尾ビレの開き具合には、ハーフムーン・プラカットの血筋も推測できる。

2019年の秋、いつものようにバンコクに戻り、何か魚関係で面白いネタがないかとチャトチャックを彷徨っていた。
魚関係と言っても、主にベタになるのだが、2019年は特に目立った新品種のリリースとかもなく、ベタ業界は比較的平穏であった。
とは言え、探していれば小ネタはあるもので、いくつかはこのコラムでも紹介させてい頂いた。
2019年後半で、もっとも自分が気に入った魚は、今回ここで紹介するブルー・インベリスである。
ブルー・インベリス自体は、数年前に作出され、第48回のこのコラムでも紹介済みである。
なぜ一度紹介した魚を再度ここで取り上げるのかには、いくつか訳がある。
今回はそれを解説していこう。

いつものようにチャトチャックのベタ通りのお店をチェックしていると、ワイルドのお店の店主に手招きされた。
彼が水槽の仕切りを外し、フレアリングしている魚達を懐中電灯で照らすと、そこには美しいインベリスの姿があった。
それもノーマルのグリーンではなく、ブルーに全身が輝く魚である。
彼がブルー・インベリスのブリーディングを行なっているのは、以前話を聞いていたが、ついにリリースできるようになったようだ。
お店には10匹程のオスが並べられていたが、まだ小ぶりではあるが色彩は申し分ない。
メスもいるのか尋ねると、ペアで販売可能だそうで、価格も手頃である。
以前、ブルー・インベリスが初めて市場にお目見えした際には、価格はかなり高くて、購入するのを少し躊躇った程である。
なので、このペアでも手頃な価格というのは、個人的には大変有り難い。
新品種の撮影の場合、その完成度を確認するために、できるだけ複数の個体をモデルとして撮影するためである。
撮影も仕事なので、それにかけられる経費には限度がある。
出始めの時のように高価なブルー・インベリスは、オス1匹入手するのがやっとであった。

ブルーの色合いは、魚の興奮度などにより異なってくる。
ブルーの色合いは、魚の興奮度などにより異なってくる。プラカットの血が入っている為か、ノーマルのインベリスよりもよくフレアリングを行う。魚のサイズはノーマルのインベリスと同じくやや小型でスリムである。尾ビレと尻ビレの赤い色彩と体型は、例えスプレンデンスの血が入ったとしても、オリジナル同様に維持したい。
オスはほぼみんな同じような美しい色彩を見せる
このブルー・インベリスの品種としての完成度は非常に高く、オスはほぼみんな同じような美しい色彩を見せる。とは言え、選別交配していけば、ベタ青の魚も作れそうである。そうなるとプラカットとの違いは、体型だけになってしまいそうではあるが。

自分の拘りとして、ベタの撮影の場合、可能な限り同じ種類や品種のオス同士のフレアリングを撮影したいと思っている。
今回のように手頃な価格で、多くの個体の中からモデル個体をセレクトできるのは非常に助かるのだ。
水槽の仕切りを外し、フレアリングしているオス達の中から、色彩や体型の気に入った個体を選ぶ。
色彩に関しては、ほぼ金太郎飴状態で、どれもほぼ一緒であるが、ヒレの伸長具合などは個体差もあるので、癖がなく綺麗に伸長した個体をセレクトする。
さて、魚のセレクトが終わったら、店主にこのブルー・インベリスの作出経緯について改めて質問してみた。
他から仕入れた魚ではなく、彼自身がブリードした魚なので、直接話を聞けるのは非常に有難い。
人づてに聞く情報は、どうしても間違いなどが多く、完全には信用できないことが多いのだ。
特にタイ語から英語に変換して日本語になると尚更である。

いブルーの緊張色を表しているメス個体
濃いブルーの緊張色を表しているメス個体。この色彩を見ると、オスと同系統である事が一目瞭然である。若い小ぶりのメス個体だが、すでに腹部の卵巣も発達しており、繁殖も可能である。

このブルー・インベリスは、クラビ産のインベリスのオスに、タイ語でスィー・ナムグン(紺色)と呼ばれるプラカットのメスを交配して作出したそうである。
純粋なインベリスではなく、プラカットから色彩を移行し、3代ぐらいかけてインベリスの特徴が強く現れる個体を選別していったそうなのだ。
今回紹介している写真を見みて貰えば納得かと思われるが、体型はほぼ100パーセント、インベリスと言える。
インベリスの一番の特徴である、尾ビレと尻ビレの赤い色彩の入り方もほぼ完璧である。
今回、プラカットの血筋を導入したと言う話を聞かなければ、純粋なインベリスと言われたら、間違いなく信じてしまうレベルだ。
以前から感じているのだが、タイのブリーダー達はこうした交配に関しての情報を尋ねても、あまり秘密にしたり嘘を付いたりしない。
自分達の技術に関して自信や誇りを持っているのであろう。
最近、このようにワイルド・ベタの改良に、プラカットの血筋を導入しているケースが
増えている。

平常時でも鰓蓋や体側にはうっすらブルーが現れている
前の写真とは別のメス個体。平常時でも鰓蓋や体側にはうっすらブルーが現れている。この個体も既に卵巣が発達しており、すぐに繁殖に使う事ができる。スプレンデンス・グループの雌雄の判別は、体色やヒレの長さを見れば一目瞭然だが、生殖口付近の白い突起がメスの特徴なので、ここに注目すれば簡単である。

このコラムでも紹介済みの、イエロー・インベリスやイエロー・スプレンデンスも同じような交配で作出された魚である。
数十年前に、大阪の熱帯卵生メダカ研究所の田中健次郎氏も同じ手法でオールブルー・インベリスを作出していたのを覚えている人は少ないだろう。
まだ学生時代だったので、お金がなく購入できなくて、憧れだったのが思い出される。
この話が通じるのは、アラフィフ以上のガチガチのマニアだけであろう(笑)
20年ぐらい前にマレーシアのペナン島で、インベリスのペナン・グリーンと言う系統を殖やしていたブリーダーも、かなり昔にスプレンデンスを交配した事があると言っていた。
それを聞いた際に、意外と知らないうちに、スプレンデンスとインベリスは交配されていたりするのかもしれないと思った。
このブルー・インベリス、メスも体色がブルーが強いため、間違いなく同系統のメスだと確信できる。
ノーマルのインベリスのメスは地味な体色なのだが、このブルー・インベリスのメスはかなりカラフルである。
この辺りにプラカットとの交配を感じる。

今回の写真を見ていただけば、ブルー・インベリスの完成度の高さは理解して頂けるだろう。
ワイルド・ベタ好きなら、必ず飼育欲をそそられる事間違いなしである。
2020年には、ぜひ日本のワイルド・マニアにも普及する事を望みたい。

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