山崎浩二のSmall Beauty World

第60回「スペードテール・ギター」

もうそろそろ公表しても大丈夫だと思うので、このコラムでも書かせてもらうが、現在ベタの書籍を製作中である。
そこではスプレンデンス・グループのワイルド・ベタと改良品種のベタを紹介する予定なのだが、そこに使うための写真で納得がいかない物がひとつあった。それが今回紹介するベタ・スマラグディナ・ギターのスペードテールの写真であった。
ここで、少しベタ・スマラグディナ・ギターのスペードテールについて解説しておこう。

スペードテールが特徴的なギター。背ビレも通常のギターよりも大きく、軟条の格子状の模様も細かいようだ。尻ビレの伸長具合も美しい。このような特徴はブリーディングされた魚ならではの特徴であろう。

ベタ・スマラグディナはタイ東北部からラオスにかけて分布するワイルド・ベタで、生息場所によって色彩やヒレの形態などが異なっている。
これに関しては、以前このコラムでも取り上げているので、そこを参照して頂きたい。
その地域変異の中でも、特徴的な姿をしているのが、タイ東北部ブンカン県のブンコンロン湖周辺に生息しているギターの愛称で親しまれている個体群である。
これに関してもこのコラムで以前取り上げているので、そこをご覧頂きたい。
このギターの個体変異で、尾ビレの中央部が伸長し、スペード状になった魚が存在する。

数年前に撮影したスペードテール・ギターの若い個体。尾ビレの伸長具合など、モデルとして納得がいかない個体だったので、今回再撮影することになった。今見ると、違いは明らかである。
最初の写真とは別個体のスペードテール・ギターのオス。こちらの個体の方が僅かだが尾ビレの伸長具合が良い。尻ビレに入る細かいスポットは、ノーマルのギターには見られない特徴である。

その存在自体はかなり前から知っており、実際ブンコンロン湖にギターを採集に行った際に、現地で闘魚用に飼育されていたのも確認している。
たまにバンコクのサンデーマーケットのベタ屋で販売されている事もあったのだが、価格的に高価なので、特に写真を使う予定もないので、スルーしていたのだ。
ところが、今回書籍を製作するにあたり、自分の手持ちの写真では納得がいかなかったため、再撮影したいと考えた。
撮影する以上、極上の個体をモデルにしたいと思うのはカメラマンなら当たり前の事であろう。

スペードテール・ギターのメス個体。メスは各ヒレがオスのように伸長しないので、スペードテールの特徴は確認できない。今回は信用できるショップで購入したので、同じ系統のメスであるのは、間違いないだろう。

2018年になって、ずっとモデル個体を探していたのだが、どうも納得のいく個体が見つからなかった。
必要ない時にはいるのだが、必要な時にはいないというのは、皮肉なものである。
たまに尾ビレの伸長具合の良い個体を見かけたのだが、全体のバランスにどうも納得がいかなかったりした。
なんだかんだで、2018年12月になってしまい、そろそろ帰国が近づいて来てしまった。

もう、これ以上は待てないという事で、本気でモデル個体を探し始めた。
以前は、ワイルド・ベタを扱うショップは数軒しかなったが、今ではバンコク近郊も合わせると10軒以上はある。
ほぼ全部を回ってみたが、どこの個体も納得がいかない個体ばかりであった。
結局、一番古くから付き合いのあるワイルド専門店でモデル個体を見つけた。
価格は並のギターの数倍だが、納得できるクオリティの魚であった。
ほぼ同じレベルの個体を2ペアゲットした。
尾ビレの伸長具合は、理想の80%ぐらいだが、十分納得できる。
尾ビレ以外の、腹ビレ、背ビレ、尻ビレの伸長具合も申し分ない。
以前、撮影した若いギターのスペードテールは、非常に神経質で撮影にてこづった記憶がある。

スペードテールではなく、ラウンドテールのノーマルのギターのオス個体。この個体もすでに何代か累代されており、ワイルドのギターより各ヒレも大きく美しくなっている。各ヒレの伸長具合を確認すれば、スペードテールとの違いは明らかである。

今回の個体は、ショップでの管理が良かったためか、撮影用水槽に慣れるとすぐに闘争を始めた。
そのおかげで、撮影も半日で終わらせることができた。
このように魚の撮影は、撮る事だけでなく、その過程も非常に重要なのである。
こうした思い入れがある分、撮影にも気合が入る。
今回は気合十分の闘争シーンをご覧頂きたい。

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