山崎浩二のSmall Beauty World

第57回「ベタ・スマラグディナ・ギター・カッパー」

スマラグディナ・ギターのカッパー体色のオス。オス同士が闘争する様子は見事である。ギター特有の尾ビレの格子状の模様もはっきりとしている。派手さはないが渋い美しさを有し、玄人好みの魚と言えるだろう。

2018年10月、例によってタイのサンデーマーケットをベタを探してうろついていた。
まずは通称ベタ通りと呼ばれる、ベタ屋が並んだ一角から攻めるのだが、今回は特に目新しいベタを見つける事ができなかった。
タイではまだニモやキャンディと呼ばれるベタが全盛で、そのハーフムーンなどの発展系がちらほら見られるだけであった。
まあ、3ヶ月見なかっただけで、そうそう店先のラインナップは変わるものではない。
サンデーマーケットには、このベタ通り以外にもベタ専門店は数多く存在している。 そのいくつかは、たぶん観光で来た人はまず見つけるのは不可能な場所にある。 それでも商売が成り立っているのは、現地のマニアにはしっかり場所を把握されているのだろう。
今回はそんな発見難易度の高いベタ屋のひとつを覗いて見た。

上の写真の個体とは別個体のオス。興奮の度合いによりカッパーの体色は微妙に変化を見せる。個体にもよるのだろうが、通常のギターよりもやや神経質なところがあり、闘争の様子を撮影するために、水槽に慣らすのに数日間を要した

ここは、ワイルド・ベタやハイブリッドなどでたまに掘り出し物がいるので、定期的な巡回は欠かせない。
この店は照明がないので、暗い店内で茶色く色づいた水の中の魚を確認するのは非常に難しい。
ふと見上げた棚の一角にちょっと気になる魚を発見した。

ガラス容器の間の仕切りを外して、フレアリングする魚の姿を確認する。 この仕切りを外して、闘争するベタの様子を眺めるのが、ベタ探しで一番楽しい場面と言えるだろう。
仕切りを外すと、隣の魚と激しくフレアリングを始めたのだが、その姿は初めて見るものであった。
スマラグディナのギターなのは、尾びれの格子状の模様から間違いない。 しかし、体色が全く違うのだ。
マジックリーフで色づいた水のような、茶色っぽい色彩をしている。
近づいて確認すると、ベタではカッパーと呼ばれる赤銅色の体色をしている。 ギターでこのタイプは初めて見る魚である。
こうしたニューフェイスがさりげなく並んでいるのが、タイのベタ屋の凄さである。

美しいプロポーションを見せるが、これはブリーディングされた魚ならではのものである。自然下で採集されたギターは、繁殖した魚よりも各ヒレが短い傾向がある。ギターに限らず、スマラグディナ一般に言える事だが、繁殖魚の方がヒレが大きく発達してプロポーションは美しい。
ブンコンロン湖のSEKAと言う地域で採集したギターのオス個体。ギター特有の尾びれの格子模様がはっきりとせずに、体色がグリーンではなく赤みを帯びている。同産地の個体でも個体差は大きいようだ。このような個体を選別交配してカッパー体色のギターが作出されたのであろう。

店主に名前を確認すると、やはりスマラグディナ・ギターのカッパーだそうである。 ハイブリッドとかではなく、通常体色のギターを繁殖する中から現れた色彩変異を固定した物だと言う。 そう聞くと、以前ブンコンロン湖で採集して撮影したギターの事を思い出した。
その魚はSEKAと言う地域で採集した魚なのだが、体色が妙に赤茶色であった。

ギターとしては規格外の体色を、面白いなと思い撮影だけはしておいたのである。
こうした赤茶色の個体を選抜交配して、このようなカッパーのギターを作出したのであろう。
こうしたニューフェイスのベタを見つけたら、ベタ・フォトグラファーとしては撮影して記録に残さなければいけない。 しかし、予想通り初物なので結構高価である。

自分は撮影の際に闘争の様子を撮りたいので、いつも同タイプのオスを2匹購入するようにしている。 この拘りのために、モデル代は倍かかるのである。
メスが見当たらなかったので、メスは売っているのかと尋ねると、耳を疑うような答えが返って来た。 メスもいるが、オスの数倍の値段だと言うのだ。 確かにニューフェイスであるが、とても手が出る値段ではない。

ウドン産のスマラグディナから作出され、市場ではもうポピュラーになっているカッパー体色の個体。スマラグディナ以外でも、マハチャイエンシスでもカッパー体色の魚は知られており、この仲間は潜在的にこのような体色になる形質は持っているのであろう。

自分が今まで購入して来たタイのワイルド・ベタの中でも最高の価格である。
自分が殖やした魚で商売を考えているブリーダーであれば、購入するだろうが、撮影だけの目的には高過ぎる。 自分達カメラマンも商売なので、撮影の際には経費として使って良い金額は把握している。 オス2匹の購入は経費的に問題ないが、この高価なメスを購入すると経費倒れしてしまうのだ。
と言う訳で、申し訳ないが今回のこのコラムではオスだけの紹介である。
オスだけでも紹介できれば、この魚の魅力は十分語れるので十分であろう。 記事の中でオスの添え物程度の扱いのメスに大枚は叩けない。
この値段には、ブリーダーの殖やされて値段を崩されたくないという思いが、十分読み取れる。
ただし、販売してしまえば、もうその後はコントロールは不可能である。 誰かがこの高価なメスを購入し、ブリードしてまた販売する事だろう。
魅力的な魚なのだが、今の価格では、確実に日本の市場での販売は不可能である。 半年もすれば、この魚もペアで適当な価格で入手できるようになるだろう。 早く適正価格になって、日本でも楽しまれるようになって欲しいものである。

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