第108回 ベタ・タイフラッグ
オス同士で闘争するタイフラッグのプラカット。これは2022年に撮影したもので、まだかなり高価だった頃である。その後タイフラッグの色彩パターンの固定化が進み、現在では比較的手頃な価格に落ち着いている。
タイフラッグと呼ばれるベタは、2016年に最初はプラカットから作出された。
当時はその魚がオークションに出品され、最終的に53500バーツ(現在のレートで約26万円)で落札されたとしてタイ国内だけでなく日本でもニュースになったほどである。
このタイフラッグと呼ばれるベタは、その名の通りタイの国旗と同じ赤と白と青の配色が特徴である。
現在のタイの国旗は1917年に制定されたもので、赤は国家、白は宗教、青は王室を表しているそうである。
最初の値段はとんでもなく高価であったため、ベタ界隈以外でも大きく話題になったが、このベタの値段はしばらくは下落しなかった。
2022年当時、チャトチャックのあるお店では1匹まだ約15000円で販売されていた。
やや若くこれからの成長が楽しみなタイフラッグ。他のベタ同様に成長に連れて色彩は変化するので、良い方向に転ぶか悪い方向に転ぶかは神のみぞ知るなのだが、このぐらいのサイズであれば大方の予測は可能である。
体のブルー、各ヒレのレッドの縁取りとヒレの基部のホワイトがタイフラッグのお手本の様な色彩の個体である。同じ親から産まれた兄弟でも、この色彩パターンにはかなりの個体差があるので、選別により価格の違いが出てくるのである。
この理由はこの魚を多数お店で見ていると容易に想像出来た。
綺麗に赤と白と青がバランス良く配色された個体を得るのは難しいのである。
ショップにはタイフラッグ崩れと言うかカラーバランスの悪い魚は安価で多数並んでいた。
その当時はまだこのタイフラッグの固定率が低かったので、綺麗にタイ国旗の様な配色の個体を得るのはかなり難しかったのであろう。
体型的には申し分のない個体であるが、各ヒレ基部のホワイトバンドがもう少しくっきりとしていれば更にグレードが高くなったであろう。こうした細かい点がタイフラッグでは評価され価格に繋がる。
この個体も各ヒレ基部のホワイトバンドがさらに太くなり、尾ビレのレッドがはっきりすれば高い評価になるであろう。体系的には美しくレベルは高いのだが、タイフラッグは色彩パターンが一番重要である。
2025年現在では、かなり固定率も高まったためか、タイフラッグの値段は一般のマニアにも手が届く様な価格になっている。
とは言え、綺麗なタイ国旗の配色になった個体は現在でもそれなりの値段がする。
日本ではタイの国旗など知らない人の方が多いので、タイフラッグのベタと言ってもピンと来ない人の方が多く、あまり人気が無いと耳にしたことがある。
まあ、もっともな話しなのであるが、タイの国旗を知らなくてもこの赤と白と青の配色は非常に美しく、誰が見ても綺麗と感じると思われるので残念な限りである。
最初はプラカットから始まったタイフラッグであるが、現在では様々な品種にこの色彩が移行されている。
タイフラッグと呼ばれるベタは初期はプラカットだけであったが、最近ではハーフムーンの個体も多くなっている。この個体もハーフムーンとしては体型的には美しいが、タイフラッグとしてはホワイトバンドがはっきりしない点がやや残念である。
このハーフムーンのタイフラッグは体型的には申し分がないが、ブルーとホワイト、レッドの境がもう少し鮮明であれば更に高評価されたであろう。体型の他このように色彩パターンの選別が必要なので、急激な価格の暴落もなく価格が安定している。
ハーフムーンやフルムーンのタイフラッグはその美しさから人気が高いが、そのクオリティは個体差が激しく、それによって価格は大きく異なるのは他の品種のベタ同様である。
最近ではこのタイフラッグの青の部分が灰青色になった個体も見かけるようになったが、タイフラッグと呼ぶカテゴリーでなければ、どのように進化していっていいのだろう。
大きな背ビレと2つに分かれた尾ビレが非常にゴージャスなタイフラッグのフルムーンである。ややホワイトバンドの太さやキレが悪いが、かなり目を引く美しい個体である。最近ではプラカットの他、こうしたハーフムーンやフルムーンのタイフラッグも増えている。
固定率が高くなったとはいえ、タイフラッグを繁殖させるとこの個体のようにブルーとレッド、ホワイトのバランスが悪い個体の方が多く出現する。そのために選別された美しい個体は高く取り引きされるのである。
日本で赤白模様のベタがジャパンフラッグとして人気があるように、タイではこのタイフラッグのベタはずっと親しまれて行くことであろう。
最近ではタイフラッグの中にこのようなブルーがグレーに置き換わった個体も見かけるようになった。こうなるとタイフラッグとは呼べないが、これはこれで美しいので、新しい品種に進化するのだろうか?