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大美賀隆のステップアップ・アクアリウム

第2回 ベタ・ワイルドクロス

協力/山崎浩二、リキジャパン

闘争するインベリス・シルバー(Imbellis Silver)。原種のインベリスの体を覆う色彩は通常グリーン~ブルーですが、この改良品種はシルバーであるのが大きな特徴。ヒレの伸長も素晴らしく見応えのある個体ですね。

はじめに

本連載の第2回目はベタのワイルドクロスをお届けしましょう。私がベタに魅せられたのが今から数十年前の小学生の頃。ベタといえば当時は並ベタやトラディショルベタなどと呼ばれた、今でいうベールテールフォームのベタが一般的。カラーも青や赤、その混色がメインでした。幼い私はオスの美しさや泡巣を作る興味深い繁殖行動に感動しすっかりベタが好きになってしまいました。1980年代から90年代にかけては国産ベタが人気となり、さらに90年代後半~2000年代初頭より顕著になったタイでの改良ラッシュ、それから続く現在のブームなどベタのムーブメントを間近で見るにつけベタという魚のポテンシャルに驚嘆するばかりです。2006年から2008年にかけては月刊アクアライフにて「THE BETTA MODE」の連載を担当しました。最新の改良ベタを紹介しましたが当時はまだまだマニアのアイテムという感が強く、日本でブームと呼べる状況が訪れるのは2014年以降に美しいコイベタが登場してからとなります。その後はキャンディ(ニモ)やギャラクシー、サムライ、ブルー&ブラック(アバター)など魅力的な品種が次々に登場して愛好家を楽しませています。ベタの最新品種などの情報は山崎浩二氏の「Small Beauty World」で見ることができるのでぜひ参照してみてください。ベタの魅力や奥深さが実感できますよ。さて前置きが長くなってしまいましたがワイルドクロスです。その魅力や飼育に迫ってみましょう。

ワイルドクロスとは

ワイルドクロスはWildとCrossを組み合わせた言葉で、「Wild=原種をCross=交配したベタ」を指します。ワイルドハイブリッド Wild Hybrid と呼ばれることもありますね。交配の基本は原種を用いることですが厳密な規定はなく、一般には原種同士の交配で生まれた姿形が原種のようで色彩が改良ベタのように派手なものがワイルドクロスと呼ばれる傾向にあります。

改良ベタの基となった魚はベタ・スプレンデンスという原種で、その近縁種を含めた全6種がスプレンデンス・グループと呼ばれます。このグループのベタを交配して作出されるのがワイルドクロスです。交配によって2種、3種を用いたりブリーダーによっては1種から地道に色変わりを固定していく場合もあります。ただし同種間の累代繁殖で誕生した元親の面影を色濃く残す個体は、ワイルドクロスというよりもアクアリウムストレイン(飼育下で発生した系統)と呼んだほうがいいですね。

スプレンデンス・グループのベタ

すべての改良ベタの基となった原種ベタ・スプレンデンス Betta splendens。ワイルド同士の交配にも用いられ美しいワイルドクロスが作出されています。タイの中部~西部に分布。写真はタイのタラット(トラート)県で採集された個体。
こちらも原種のベタ・インベリス Betta imbellis。マレー半島やスマトラ島北部の一部地域に分布。トップに掲載したインベリス・シルバーの基となった原種です。写真はタイのクラビ県で採集された個体。
原種のベタ・スマラグディナ Betta smaragdina。タイの東北地方やラオスなど広範囲に分布し、地域によって色彩やヒレの形状などに差が見られます。写真はタイのウドーンターニー県カムチャノートで採集された個体。
ベタ・スマラグディナ “ギター・スペードテール” Betta smaragdina “Guitar Spade tail”。原種スマラグディナのギターと呼ばれる地域個体群の累代飼育で誕生したスペードテール個体。色彩も原種より鮮やかになっていますが、ワイルドクロスというよりもアクアリウムストレインとするのが適切でしょう。

ワイルドクロスはただ単に異種を交配しただけでは多くの愛好家に指示されるような美しい品種はできません。交配によって将来有望な原石を見付け出して、さらに選抜・交配を重ねて美しい魚を作っていくのです。金魚や錦鯉、メダカなどと同じで地道な作業が必要なんですね。知り合いのタイ人ブリーダーは10以上の世代を重ねて美しい個体を作出しました。こう聞くと凄く長い年月がかかったのかと思われるでしょうが、うまくやればベタは1年で3~4世代の更新が可能ですから3年もあれば10世代の更新は可能なんです。1年中暑いタイでは通年屋外で飼育できるためブリードも効率的に行えるんですね。

タイのベタファーム(養殖場)に並ぶ飼育槽。これでも広い敷地の一部分。屋外に置かれた土管のような大きな容器では主に繁殖させた大量の稚魚や幼魚を育成。ここから美しい個体が見出されます。

ワイルドクロスの歴史と注目のエイリアン

ワイルドクロスというカテゴリが定着してきたのは最近のことですが、もちろん古くから異種同士での交配や同種間での色変わりの作出は行われてきました。例えば古くからのベタ愛好家にもよく知られたインベリスの“メタリカ”という品種がいました。これは1980年代に作出されたインベリスの色変わりでメタリックブルーグリーンの色彩が全身を覆う美しい品種でした。ちょうど冒頭で紹介したインベリス・シルバーの色彩を原種のようなブルーグリーンカラーにしたような雰囲気のインベリスでした。この品種がベタの改良に与えた影響は大きく、ここから徐々に改良ベタに異種の血も援用されていったようです。

その後タイではプラカットを中心として様々な交配が試みられてきました。そして現在のワイルドクロスの潮流となったのは2011年に作出された個体あたりだと思われます。拙著『ベタ 164の品種紹介と飼育解説』(2014年エムピージェー)のp48-49にてワイルドクロスを紹介していますが、そこで掲載したワイルド系ドラゴン・プラカット“フラッシュブルー”と“ブラックエメラルド”が原種の面影を色濃く残した個体として当時のワイルドクロスの特徴をよく表しています。またプラカットとの交配も考えられる個体も散見されるようになりました。

原種と交配した個体の大きな特徴は他の改良ベタに比べてボディが長く細身となることで、慣れてくると一目で原種の血が入っているのがわかるようになります。いかに鮮やかで模様の美しいベタを作るかということを模索していたブリーダーが多いなかで、2011年当時にこのような渋いカラーのベタを作出していたブリーダーがいたというのはいかにタイの懐が深いかの現れでしょうね。もっとも当時はタイでも愛好家の反応は薄く、というかほとんどなく一部の原種好きマニアに指示されたくらいでした。日本人で注目していたのは私や山崎氏くらいだったのではないでしょうか(笑) 

2011年に発表されたワイルドクロス(ワイルド系ドラゴン・プラカット“フラッシュブルー” Wild Cross Flash Blue)。原種好きには一定の評価を得ましたが地味な印象からか当時は注目されませんでした。
こちらも2011年に発表されたワイルド系ドラゴン・プラカット“ブラックエメラルド”(Wild Cross Black Emerald)。細身の姿形は原種そのものですね。インベリスの血が大きく関わっていると思われます。
こちらもワイルドクロスとして紹介されましたが、プラカットの血が入っていると思われます。細身のボディに原種の血がうかがえます。2011年リリース。

同書ではワイルドクロスというジャンルを提唱していますが、日本でこのジャンルが認知されるようになるにはある品種の登場まで待たなければなりませんでした。それが2016年に登場したエイリアンです。日本ではシンフォニーやトリプルクロスという通称名で流通することがありますが、本場タイではエイリアンと呼ぶのが通常でこのあたりは山崎氏のコンテンツ「第77回 エイリアン・ゴールド」にも詳しいので参照してみてください。このエイリアン、原種のスマラグディナ“ギター”、スティクトス、マハチャイエンシスの3種を元親として作出された魚で、全身がビカビカの輝きに覆われたまばゆい色彩が魅力です。原種のヒレの特徴がよく反映されていて観賞的にも美しい魚に仕上がっており、多くの愛好家の記憶に残るベタとなったのは間違いないでしょう。発表当初はヒレの形状や鱗の並びが不安定でしたが、現在では改良が進み鱗の揃ったキレのある美しいヒレを持つ素晴らしい個体も見られるようになっています。

ワイルドクロスというジャンルを代表する品種となったエイリアン。姿形は原種のようで色彩は他の改良ベタにも引けを取らない美しさ。2016年11月に撮影した個体。現在ではさらにクオリティの高い個体も見られます。

魅力的なワイルドクロスたち

やはり人気品種が出てくると大きな動きがありますね。エイリアンの発表からワイルドクロスが注目されるようになってくると原種を用いた改良が活発になりました。インベリスやスマラグディナ、マハチャイエンシスなどの血が色濃く反映された個体が目立つようになり、最近では2020年に発表されたベタ・スプレンデンスを改良した“ベンジャロン”という品種が話題になりました。スペードテールになるプールア県の地域個体群から作出されたといわれ、全身が朱赤になる美しい魚ですが、今年に入って色彩が黄色のイエローフォームも発表されています。赤がいたら黄色を作ってしまうのがタイ。さすがですね。ちなみにベンジャロンとはタイのアユタヤ王朝時代に作られた伝統的な多色の焼き物のことで、サンスクリット語で5色を意味します。ということは赤、黄の次にはまた別の色の作出が見られるのかも。楽しみです。

スマラグディナ・カッパー(Smaragdina Copper)。ワイルドクロスとしては以前から見られた比較的古い品種です。全身が銅色に覆われる渋い玄人好みの魚ですが改良の元親として貴重な存在でしょう。
マハチャイエンシス・ブルー(Mahachaiensis Blue)。ビカビカのブルーで覆われるマハチャイエンシスの改良品種です。エイリアンと比べるとヒレの模様が目立たずおとなしい印象を受けますね。
スプレンデンス“ベンジャロン・イエロー”(Splendens “Benjarong Yellow”)。レッドに次いで発表されたイエローフォーム。尾ビレがしっかりスペードテールになっています。次はどんなカラーが来るのか⁉

色彩バリエーションでいえば冒頭で紹介したインベリス・シルバーもなかなか興味深い個体です。インベリスの改良の変遷について見てみると1980年代に発表されたメタリカが端緒ですがそれ以降は目立った作出は見られず(ひっそりと改良は続いていたかもしれませんが)、ようやく2018年のインベリス・グリーン(ボディがグリーン)、ブルー(ボディがブルー)あたりから顕著になりました。その変遷を表にしてみるとなかなか興味深いものがあり、ボディとヒレに入る色彩の組み合わせでいろいろなパターンが作出できるのだと感心します。2020年に発表されたオレンジもかなり美しい個体でインベリスの改良品種だけでコンテンツができてしまうくらいです。機会があればまとめてみたいと思います。

インベリス・シルバー(Imbellis Silver)。2022年に輸入されたヒレの伸長が素晴らしい個体。インベリスの改良品種はボディとヒレに入る色彩が多様でコレクションや繁殖の楽しみが広がりますね。
インベリス・シルバーのメス。メスは原種そのものといった雰囲気を漂わせていますね。

インベリスの改良品種の変遷

その他にも魅力的な個体を紹介しておきましょう。人気のエイリアンのカッパー。これはド派手なブルーやグリーンに比べると落ち着いた色味で逆によく目立つ存在ではないでしょうか。面白い魚も発表されています。スマラグディナ・ジャイアント。一般的なスマラグディナよりも大きくなるという触れ込みでしたが、う~ん入手時はそれほど巨大ではなく2020年にリリースされたマハチャイエンシス・ジャイアントに比べるとややインパクトに欠けますね。それでも太目の尾筒を持つがっしりとした体躯、そして何といってもスペードテールになる尾ビレが大きな特徴です。ブリラム産のスマラグディナの血が援用されているとされ、なるほどその特徴がよく出ていると感じます。

エイリアン・カッパー(Alien Copper)。ややシルバー感の強いカッパーの落ち着いた色彩がGood! ヒレの成りも整った美しい個体ですね。
エイリアン・カッパーのメス。メスも全身がカッパーの色彩で覆われるのが面白いところ。
スマラグディナ・ジャイアント(Smaragdina Giant)。一般的なスマラグディナよりも迫力はありますね。

そしてなかなか興味深い個体を2匹入手したので掲載しておきます。いずれも尾ビレがスペードテールになるレッドが強い個体とブルー系の個体ですが、どの種が元親になっているのか交配の経緯はまったくの不明。ここからさらに改良を進めるプロトタイプ的な魚かもしれません。エラ蓋の色彩からするとインベリスの血が入っているような感じですが、スペードテールになるスプレンデンスの影響も受けているのかも。このような魚からより美しいワイルドクロスが作出できれば楽しいですね。なお飼育のパートではこのレッド系とスマラグディナ・ジャイアントのメスを飼育例に使用しています。様子を見て交配させようかと考えているので、うまくその後の記録が残せればここで紹介しようと思います。

交配不明のブルー系個体。スペードテールとパウダーブルーの色彩がなかなか美しい個体です。
交配不明のレッド系個体。こちらもはっきりとしたスペードテールになります。

飼育のポイント

アクアリストならベタは小さな容器、例えばビンなどで飼育できると聞いたことがあるでしょう。しかし厳密には「小さな容器でも飼える」というのが正しく、容器が大きいのに越したことはありません。もっといえば一般の熱帯魚のようにフィルターをセットした水槽で飼育すればトラブルも少なく調子よく飼育できるでしょう。とはいえベタにはいろいろな品種がありバラエティ豊かで、何品種もコレクションしたくなってしまいます。ポイントを押さえれば小さな容器で問題なく飼育できる魚ですから、やはり複数のベタを同時に楽しんでみるのがおすすめですよ。そこでここでは小型のケースを使ったワイルドクロスの飼い方を解説していきましょう。

◆ワイルドクロスの飼育例
~繁殖とコレクションを同時に楽しむ~

左に繁殖用の水槽を設置しワイルドクロスのレッド系のオスを飼育。スマラグディナ・ジャイアントのメスをお見合いさせるために隔離用の「フロートボックスS」に収容して雌雄の様子を観察。繁殖用水槽の右側にはワイルドクロス各種の飼育を楽しむために「ショーベタ コレクションケースM」を4個設置。飼育している品種は右からエイリアン・カッパー、スプレンデンス“ベンジャロン・イエロー”、インベリス・シルバー、ワイルドクロスのブルー系。各水槽には水質維持用のゼオライト「ベタのクリーンゼオライト小粒 200ml」「ベタのクリーンゼオライト大粒 200ml」を使用。LEDライトはベタの観察やメンテナンス、給餌の時に点灯。
こちらは各品種のオスを前面のケースでメスを後方のケースで飼育するパターン。こんな飼い方もおすすめ。

■飼育DATA■
繁殖用水槽:幅230×奥行き150×高さ250mm/約7.3L
コレクション用ケース:幅130×奥行き80×高さ150mm/約1.3L
フィルター:なし
ろ材:ベタのクリーンゼオライト小粒 200ml、ベタのクリーンゼオライト大粒 200ml
底砂:なし
照明:ライトアップ 150 ホワイトライトアップ 400 ホワイト
ケース間の仕切り:ベタのブラインドカード
水温:26~28℃
餌:ベタ専用浮上性フードを1日に2回
飼育生物:ワイルドクロス各品種

※繁殖用水槽には「グラスガーデンN230」を使用
※コレクション用ケースには「ショーベタ コレクションケースM」を使用
※水温計は「貼るテンプ M」を使用

●ベタ飼育、基本の基本
・ベタのオスは単独飼育が基本
・空気呼吸をするため密閉環境での飼育はNG

ベタのことをあまり知らない方もいるかもしれないので、まずは飼育の大前提を知っておきましょう。ベタは闘魚とも呼ばれオス同士が激しく争います。時には相手が死んでしまうこともあるくらい激しく争うこともあるほど。そのためオス同士は一緒にせず1匹ずつ飼育するのが基本です。メス同士も争いますがオスほどの激しさはなく幅30㎝ほどの水槽なら複数での飼育が可能です。しかしお互いにヒレをかじるなど観賞面でマイナスとなるのでメスも単独で飼育することをおすすめします。

またベタは迷宮器官という呼吸補助器官を持ち水中でのエラ呼吸の他に水面から直接空気を吸う空気呼吸も行います。これは原種のベタが溶存酸素量の少ない湿地などの環境で暮らすことで獲得した特殊な能力。しかし逆に空気呼吸ができないと死んでしまうため密閉した容器での飼育はNGとなります。

水面から口先を出して空気呼吸をするインベリス・シルバーのオス。個体によって空気呼吸の頻度は様々ですが、闘争時など興奮すると頻度が多くなります。
ベタの口先をよく見ると空気を吸い込みやすいように上付きで湾曲しているのがわかります。
空気呼吸をするインベリス・シルバーのオス。

●流通と入手
・ワイルドクロスは流通量少なめ
・ベタに強いショップで入手しやすい

ワイルドクロスは現在どこでも見られるベタではないのが少々残念。しかしベタに強いショップであれば時折入荷するので、日ごろから入荷情報をチェックしていれば入手は可能だと思います。まだまだ流通が少ないベタですからショップのスタッフさんと仲良くなって入荷の依頼をしておくのもいいかもしれないですね。

●個体の選び方
・元気でやせていない健康な個体を選ぶ
・オスは怒りやすいオラオラ系の個体が◎

体表の色つやがよく元気な個体を選ぶのはもちろん怒りやすい個体がおすすめです。ショップで購入する場合はスタッフの方に確認してケース間の仕切りを外してみましょう。すぐに怒ってヒレを広げるような個体であれば問題ないでしょう。水底や水面付近でボーっとしている個体やヒレをなかなか広げない個体、やせている個体などは避けたほうがいいですね。けんかっ早いオラオラ系の個体が購入には適しています。メスはすぐに産卵を狙いたいなら卵巣が発達した腹部が大きな個体がベター。体表の色つやがよくヒレを広げて泳いでいる個体がおすすめです。

隣のケースのスプレンデンス“ベンジャロン・イエロー”を威嚇するインベリス・シルバーのオス。このように元気で気の強い個体を選ぶのがいいでしょう。

●飼育容器
・複数の品種をコレクションするなら小型のケースが便利
・繁殖を狙うなら水量のある水槽がおすすめ

複数をコレクションしたりちょっとしたスペースで飼育するならフィルターをセットしない小型の容器がおすすめ。だいたい水量が1Lほどあれば管理しやすいと思いますよ。今回の飼育例では「ショーベタ コレクションケースM」を使用していますが、水をケースの7~8割くらい入れると約1Lになります。

繁殖用の容器はペアリングや稚魚の育成のしやすさなどを考えると小型のケースではなく水槽がおすすめです。今回は幅23×奥行き15×高さ25㎝の水槽を使用しています。

小型のケースを並べてコレクション飼育。いろいろな品種を同時に楽しめるのでおすすめです。
小型ケースで複数のベタを楽しんでみましょう。

●容器の間に目隠し用のカード
・通常は容器の間にカードを差し込んでストレス軽減

ベタは他の個体を見付けるとエラ蓋やヒレを広げて相手を威嚇します。特にオス同士は常に相手の姿が視界にあるとストレスになるので、容器の間にカード等を入れて普段は相手が見えないようにしておくといいでしょう。このカードは何でもいいのですが、耐水性のある素材でできたものが便利ですね。ここでは専用の「ベタのブラインドカード」を使用していますがユポという合成紙のため水に強く、つまみが付いているので使い勝手がよくおすすめですよ。なおオスからメスが見えているような状況は問題ありませんが、メスが嫌がっているような場合もカードで目隠ししてあげてください。

「ベタのブラインドカード」は「ショーベタ コレクションケースM」に適したサイズ。普段はケース間に差し込んでおきましょう。
カードを外す時はPullの部分をつまんで引き抜けばOK。使いやすくておすすめです。

●蓋
・ワイルドクロスはジャンプ力が強いので要注意
・飼育時にはケースに必ず蓋をしよう

ヒレの大きなハーフムーなどの改良ベタはジャンプすることは少ないのですが、ワイルドクロスはジャンプによるケース外への跳び出し事故が多いので要注意です。大事に育てていたベタを干物にしてしまった経験は私にもありますがとっても悲しいもの。そこでケースには必ず蓋をしましょう。自作してもいいですが専用のものがあれば万全。ここでは水槽には付属の専用蓋を使用し、コレクションケースには別売りの「ショーベタ コレクションケースM 専用フタ」を使用しています。

ベタの跳び出し防止のためケースには蓋をしましょう。「ショーベタ コレクションケースM 専用フタ」は「ショーベタ コレクションケースM」にぴったりと合うのでおすすめ。

●フィルター
・小型ケースではフィルターなしでOK

小型ケースで飼育する場合はフィルターを設置せずに、こまめな換水で水質を維持するのが基本。今回使用した繁殖用の水槽のようにやや水量がある容器なら小型のフィルターを設置して飼育するのもいいと思います。フィルターによって水質が良好に維持できれば換水の手間が軽減できます。忙しくてなかなか換水に時間が割けないという方はフィルターをセットして飼育するといいでしょう。ただし改良ベタは強い水流を好まないので水中フィルターを使う場合は水流を弱くする工夫をしたり、エアポンプで作動する「水作エイトシリーズ」などの投げ込み式フィルターを使用するのがおすすめですよ。

●飼育水
・水道水の塩素を中和した水道水でOK

水道水の塩素を中和すれば問題なく飼育できます。pH値は6.0~7.5くらいを維持できればいいですが神経質になる必要はなく、それよりもこまめに換水して新しめの水で飼育することを心がけてください。フンや餌の食べ残しがあると小さな容器では水が汚れやすく、またpH値が下がり過ぎてトラブルが発生することがあるので注意します。

●ベタの水作りアイテムを活用してみよう
・アンモニアを吸着するゼオライトや殺菌効果のある朴葉アイテムがおすすめ

観賞魚用のろ材としても広く使用されているゼオライトは有毒なアンモニアを吸着するのでフィルターを使用しないベタの飼育にもおすすめです。今回の記事を執筆するにあたって「ベタのクリーンゼオライト」を使ってみましたが、思った以上に水がクリアになりなかなかいいと実感しています。ベタを複数飼育しているとどうしても汚れやすくて水質が安定しづらい容器が出てくるのですが、そんな場合にもゼオライトを使ってみるといいかもしれませんね。

「ベタのクリーンゼオライト大粒 200ml」を使用中。大粒はメンテナンスが容易で何もない水槽よりもアクセサリ感覚で使えるのも利点でしょう。
「ベタのクリーンゼオライト小粒 200ml」を使って飼育中。小粒は吸着効果が高く底砂のように使えるのがグッド。

また「ベタのリーフエキスパック」も水質の安定におすすめのアイテムですね。雑菌抑制効果のある国産朴葉とゼオライトがパックされたもので、容器に入れておくと飼育水が茶色に色付きベタの好む水が維持できます。これも使用してみましたがベタにはいいですね。飼育容器に直接パックを入れて飼育してもいいですし、別容器にパックを入れて作った水を換水時に少量足すくらいでも水質の維持に役立つと思われます。繁殖時に使うとベタのやる気が出る場合もあるようなので、なかなか繁殖行動を見せない個体に使ってみるのもいいかもしれません。

「ベタのリーフエキスパック」を使ってインベリス・シルバーを飼育。

●水温
・25~28℃を維持
・冬場は保温器具で適温を維持

水温が30℃くらいでもワイルドクロスには問題ないですが、通常は25~28℃を維持するといいでしょう。水温が高めだとオスが泡巣をよく作るようになるため繁殖を狙うなら高めを維持するのがコツですね。

ベタは20℃以上あれば飼育できますが低水温の飼育では餌を少なくしたりとなかなか管理がやっかいです。そこで冬場は健康維持のためにもエアコンや保温器具を使って適温を維持しましょう。複数の小型ケースをまとめて保温できる「アクアパネルヒーター」などベタ飼育に便利な保温器具を使うのもおすすめですよ。

●餌
・お腹がふっくらするくらい食べきる量を与える
・ベタ専用飼料がおすすめ
・餌の食べ残しは早めに取り出す

長くベタを飼育してきた者からすると最近のベタ専用飼料の質の高さには驚かされます。ベタの餌には高たんぱくなものが適しているとされますが、専用飼料は高たんぱくであるだけでなくベタの腸内環境や水の汚れを抑制するよう配慮されたものがリリースされており、これらの飼料だけで状態よく飼育することができますね。専用飼料を使い始めてから冷凍飼料などの生餌を使う機会がだいぶ減りましたが、それだけ質が高いといえると思います。しかもベタが食べやすい浮上性なので与えやすいのも◎。おすすめです。

給餌量はベタのお腹がふっくらするくらい。パッケージにも給餌量が記載されているので参照してみてください。私の場合は毎回同じ量ではなく食べ方を見ながら個体によって調整しています。ベタも人間と同じでいつもたくさん食べるとは限りません。食い付きが悪いときは少なくし、場合によっては餌を与えない日もあり食欲を促します。

調子が悪い個体は食が細くなったり食べなくなることもあるため、餌やりはベタの健康を確認するための貴重な時間ですよ。しっかりと食事の様子を観察しましょう。調子を崩したベタの対処法は「ベタの健康管理と病気の予防」で解説します。そして餌の食べ残しは水を汚す原因になるため残したら早めに取り除くようにします。

餌を食べようとするエイリアン・カッパーのオス。一度にまとめて与えるのではなく少量ずつ様子を見ながら与えるのもいいでしょう。
ベタの専用飼料を食べるワイルドクロス

●照明
・ライトアップで美しい体色を観賞

長時間の点灯はコケ(藻類)の発生につながるため飼育者がいないときは点灯する必要はありませんが、照明を使うと美しい姿を観賞できるので設置をおすすめします。餌やりや換水時にベタの様子を観察する際にも照明があると便利です。また水草を入れて飼育する場合は照明が必須ですね。

●日常の水質管理と環境の維持
・フンの除去と換水で水質維持
・フンの除去は大型スポイトの使用が便利
・換水は塩素を中和した水道水や汲み置いた水で

フィルターを使わない小型ケースを使った飼育ではフンの除去と換水が水質維持のポイントとなります。フンの除去作業は朝でも夜でもいいですが可能な限り毎日行うことでベタにとって良好な水質を維持することができます。フンを放置すると水を汚して病気発生の原因になることが多いですから、早めの除去が吉ですね。フンを長期間放置しても丈夫なベタは平気な顔をしていることもありますが、水が極端に酸性化してヒレにダメージが現れ観賞価値が損なわれることもあります。やはりフンは放置せずにできるだけ早く取り出すのがいいでしょう。フンの除去と同時に新鮮な水で換水も行えば快適な環境を維持できるはずです。

フンを除去するのは大型のピペットやスポイトが便利です。「マルチスポイト」のようにアクアリウム用のスポイトは使い勝手がよくおすすめです。

「マルチスポイト」を使ってフンを除去。確実にフンをキャッチできる優れモノ。冷凍アカムシなどの給餌にも適しています。

換水には塩素を中和した水道水を使用すればいいですが、私はペットボトルに水道水を入れて一晩置いたものを使用しています。作業しやすい方法で行ってみてください。換水量ですが私の場合は1~2Lほどの容器に対してほぼ毎日100~200ccくらいを換水しています。だいたい全水量の1/10ほどですね。毎日の換水が行えない場合は、3日に1回など自分なりのパターンをつかんでみてください。全水量の1/3~1/2くらい換水しても問題ありません。多めに換水する場合はアクアリウム用のホース「クイック水替えポンプ」などの使用が便利です。

また長期間同じ容器で飼育していると汚れが目立つようになり、ガラス面にコケや汚れが付着することもあります。このような場合はケースを丸洗いして全換水してもいいでしょう。この際空きのケースをストックしておくと魚をそちらに移せばいいので作業が楽です。全換水する予定なら前日に空きケースに水を張っておけば、スムーズに魚を移動させることができます。そのためベタを複数飼育する際は空きのケースをいくつかストックしておくのもおすすめですよ。

ペットボトルに汲み置いた水で換水。ベタを驚かさないように注水はやさしく。
水差しを使って注水。換水用の水は塩素を中和した水道水でOK。

●フレアリングのすすめ
・フレアリングトレーニングでベタを美しく育てる
・勝敗が付かないタイミングでトレーニングを止める
・単独飼育の場合は鏡を利用

ベタの飼育時にはフレアリングトレーニングを行うことをおすすめします。ベタを複数飼っている場合はケース間の目隠しカードを外してみましょう。ベタは相手を見付けるとエラ蓋を広げヒレを全開して自分を大きく見せて威嚇します。フレアリングを行うことでヒレの広がりがよくなり美しい姿形を保つことができるのです。いってみればフレアリングトレーニングはベタのストレッチ運動といった感じですね。適度な運動が健康なベタを育てると考えればいいでしょう。

またフレアリングトレーニングはとっておきの観賞タイムでもあります。きれいなベタを見ながらの育成。ベタ飼育の醍醐味ですね。トレーニング時間は長すぎるとベタに負担となったり、戦意を喪失してフレアリングをやめてしまうこともあります。ポイントは勝敗が付かない状態で止めること。そうすることで自分が強いと思い込み、常にオラオラ状態で美しい姿を見せてくれるようになります。トレーニングの時間はだいたい2~5分ほどを目安に毎日1~3回ほど行うといいでしょう。ちなみにベタを1匹しか飼っていない場合や複数飼っていてもケースを近くに置いていない場合は手鏡などを使って自分の姿を見せればフレアリングトレーニングが可能です。ぜひ実践してみてください。

ワイルドクロスのフレアリングトレーニング。左はインベリス・シルバーのオス、右はスプレンデンス“ベンジャロン・イエロー”のオス。
ワイルドクロスのフレアリングトレーニング。左はワイルドクロスのブルー系のオス、右はインベリス・シルバーのオス

●便利アイテムの活用
ベタが人気の熱帯魚になった現在、いろいろな専用の便利グッズがリリースされています。私も使ってみてコレいいぞと思ったのが「ベタのおやすみリーフ」。よく考えられたグッズですね。ベタは水底や水面付近で寝ることが多いですが、自然下ではおそらく水際の草の間や落ち葉の下など身を隠せる場所で休んでいると思われます。このグッズを設置すると葉の上で休むことが多いですね。上の葉がシェードになっていて落ち着くのかもしれません。いいですよ。

またおやすみリーフはベタが作る泡巣の産卵床としても使えます。上の葉を水面付近に設置すると葉裏に泡を溜める様子が観察できます。個体により泡巣を作る場所には好みがあるようなので必ずとはいえませんが、他に産卵床となる素材がなければ高確率で泡巣を作ってくれますよ。

「ベタのおやすみリーフ」を産卵床として泡巣を作るワイルドクロスのレッド系のオス。
「ベタのおやすみリーフ」から顔を出して周囲を警戒。

健康管理はフンのチェックから

・健康なベタのフンは固形状でソーセージのような形
・フンを毎日観察してベタの健康状態を把握

ベタの健康を確認するのに有効なのがフンの形状チェックです。フンを毎日観察することでベタの体調を把握できるようになりますよ。健康なベタのフンは固形状でしっかりしています。よく見ると実は長くつながっていて切り離していないソーセージのような形をしています。フンの色は餌の色にもよりますが茶~こげ茶が多いですね。体が大きく摂餌量が多いオスはフンが大きく逆にメスは小ぶりです。いずれもしっかりした固形状であれば健康だと思っていいでしょう。

一方体調を崩しているベタの場合は軟便だったりフンが粘液状で水に溶けやすい状態だったりするのでフンが目立たないこともあります。慣れてくるとフンの異常はすぐにわかるようになるので、異常が見られたら次項を参照に早めに対処しましょう。

フンが固形状でしっかりしていればベタも健康で元気。
健康なベタのフンはソーセージのような形をしている。

ベタの健康管理と病気の予防

・調子を崩したら早めの換水&塩の投入

適切な管理をしていれば健康に飼育できますが、それでも様々な要因によってベタが調子を崩すことがあります。そこで調子を崩した時に回復させるための方法を知っておくことが大切です。まずはベタが調子を崩した時のサインを挙げてみましょう。

・食欲がなく餌の食いが悪い
・フンの状態がいつもと違う
・ヒレの開きが悪く水底でじっとしていることが多い
・フレアリングに反応しない
・普段と違って神経質で飼育者に驚いてすぐパニック状態になる

このような状態が見られたらできるだけ早く1/2~全換水を行います。その際に塩を入れると回復しやすくなり病気の予防にもつながります。また同時に先に紹介した殺菌効果のある朴葉とゼオライトで作った茶色の水を入れるのもおすすめです。塩は粗塩などが適し添加物が入ったものはNGなので気を付けてください。投入する塩の量は水1Lに対して1gほどで十分です。塩を入れることで殺菌作用やミネラル補給が期待できます。ベタ専用の塩タブレット「ベタの塩タブレットミニ」は簡単に使えるのでおすすめですよ。

また調子を崩してからの換水後は1日餌やりを控えて様子を見ますが、飼育者に反応して餌を食べたそうにしていたら試しに与えてみてください。食べるようなら少なめに与え、徐々に量を増やしていきます。このあたりは人間と同じ。様子を見ながらゆっくりと回復させましょう。

◆ベタが調子を崩した時の対処法

・ベタが調子を崩した
      ↓
・できるだけ早く換水&塩の投入
      ↓
・餌は1日控えてから様子を見て給餌
      ↓
・徐々に給餌量を増やし通常の管理に戻す

「ベタの塩タブレットミニ」。飼育水1Lに対して2粒入れればOK。ベタの新規導入時や換水時の使用がおすすめ。

病気にかかったら

先に挙げたサインを見逃していると病気になる可能性が高くなります。ベタによく見られる病気は以下のようなものがあります。

・コショウ病
水質悪化が発生の原因なることが多く体やヒレにコショウのような極小の白い粒が付着します。悪化すると死亡することが多いので早めの治療が必要です。

・白点病
急激な温度低下で発生することが多くコショウ病よりも大きな白い粒が体表に付着します。悪化すると死亡することもあります。

・エロモナス病
水質悪化や古い餌を与えることが原因となることもあります。鱗が立ったようになる立鱗や眼球が突出するポップアイの症状を併発することがあり、このような状態になると手遅れである場合がほとんどです。

いずれの病気も環境の悪化や調子を崩したベタを放置しておくことが原因となることがほとんどですね。病気の初期であればそれぞれの病気に対応した魚病薬を使うことで治療することもできますが、まずは発生させないことが大切。日々の管理をしっかり行い発生を未然に防ぎましょう。

繁殖について

ベタはコレクションも楽しいですが、飼育に慣れてきたら繁殖にチャレンジしてみるのもおすすめです。泡巣を作るという特異な生態や繁殖時に見せるオスの求愛ダンス、情熱的な産卵シーンなど見どころがたくさんあります。しかし雌雄の相性が悪かったりメスの産卵準備が不十分であるとオスがメスを攻撃して殺してしまうこともあります。そこで隔離ケース「フロートボックスS」などにメスを収容してオスとお見合いさせます。オスが泡巣を作るようならやる気十分。後はメス次第となります。メスがオスに興味を示すようなら隔離ケースから出してオスと一緒にしますが、オスの攻撃がひどいようならメスをすぐに取り出してしばらく別々に飼育し、またお見合いから始めましょう。

繁殖に適した水温は27~28℃ほどで私の経験では空中湿度が高いとオスが泡巣を作りやすい傾向があると感じています。逆に水温が低かったり適水温でも冷たく乾燥した空気が入る状況では泡巣を作りづらいようです。

さて繁殖の詳細に関してはまた別の機会に取り上げたいと思います。今回の飼育例では繁殖用水槽にワイルドクロス系のオスとスマラグディナ・ジャイアントのメスを収容しています。うまく繁殖過程が撮影できれば、その後の様子を紹介しましょう。ご期待ください。

卵を持ったメスを隔離ケースに収容してまずはお見合い。メスに気付いたオスがヒレを広げてアピールを始めます。
繁殖を意識したオスは泡巣を作り始めます。空気を吸って泡を吐くことを繰り返します。
メスがオスを意識するようなら隔離ケースから出して繁殖にトライ。

終わりに

今回はベタのワイルドクロスについて紹介してみましたが、まだまだ発展途上のベタたちです。最近ではワイルドクロスと他のカテゴリのベタとの交配も進んでいるようで新たなベタの出現に影響を与える可能性も大きいと思われます。もしよい個体を見つけたらまずは飼育してみてください。ワイルドクロスの魅力を大いに味わってみましょう。では、また!

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